はたらく
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〈プロフィール〉
小林 丈将(こばやし たけのぶ)さん(46歳)
コトヨ醬油醸造元10代目
─この仕事に就いた理由を教えてください。
小林さん:私はこの家に長男として生まれたため、幼少期は醸造所が遊び場みたいな存在で、昔からこの場に馴染みがありました。しかし、最初から継ごうとしたのではなく、小さい頃はプロ野球選手に憧れていました。
そのまま中学、高校とずっと野球をして甲子園も目指していたのですが、決勝で敗れてしまったところで野球はもういいかなと思い、やめることにしました。
高校卒業後は東京で飲食業をやっていましたが、今までやっていた野球をやめてからは目標もなくて。そこで祖母から「やることが無いならコトヨ醤油を継がないか」と言われました。
─ホームページに沢山の商品が載っていましたが、一番おすすめの商品は何でしょうか?
小林さん:今一番おすすめなのが、今飲食店で活躍している白ワインの入った「コトヨ和院(わいん)」と、昔からの伝統的な製法で作られた「笹神喜昜(ささかみきあげ)」です。醤油ならこの2種類がうちの主力商品です。
─この商品について工夫した点はありますか。
小林さん:「コトヨ和院」は私の父親たちの年代で作られた商品で、肉料理に合うものを作るため白ワインを入れて風味付けをしている、だし醤油として最先端で作られた商品でした。
新型コロナウイルス禍の影響で卸していた飲食店がほとんど営業できなくて、うちも新商品の開発など新しいことを始めないといけないと考えていた時期に、有名な方が「コトヨ和院」を使った料理でホームパーティーをする様子が投稿され、SNSや口コミで広がっていきました。それから、イカ釣りの人たちの間ではどの醤油が一番イカに合うのかといった話題が出てきたとき、この「コトヨ和院」が良いと評判になりました。寿司屋さんでも、イカの独特な味を邪魔しないと口コミが広まっています。
先代から言われたことですが、醤油は主役ではなくサポート役の食品なんです。だからこそ、サポート役として評価されていることは良いことだと思っています。
コトヨ醬油醸造元さんでも特に人気の「コトヨ和院」「笹神喜昜」
─醤油を作るうえで、特に大切にしていることは何ですか?
小林さん:最近はステンレス製の桶が主力ですが、うちは木桶で醤油を作っています。今使っている木桶は明治44(1911)年に作られたもので、仕込む度にどうしても酵母菌がつきます。そのため、うちはもろみの中に酵母菌を添加せず、既に木桶についている酵母菌で醤油づくりをしています。年々新しい酵母菌が入ってきてくれるので、そうした菌たちを壊さないでいきたいと思っています。昔から受け継いできた味を楽しんでもらえるようにという願いです。
あとは、色が濃くなりすぎないようにしています。最近の温暖化の影響で、自然を利用した製法では発酵が進みやすく、醤油の色が濃くなりやすくなっています。つい最近、「笹神喜昜」を使った親子丼で有名なお店で、醤油の色が濃くなったために味も濃いんじゃないかと勘違いされてしまうケースがありました。火入れでも色が付くので、そこで濃くなりすぎないように調整に気を付けています。
─なるほど、木桶ごと受け継がれる酵母の影響を楽しむお客さんが多いのですね。
小林さん:そうですね。それに、今はもう木桶を作る人がいないんですよね。うちにあるほとんどの木桶も石川県の大工さんがこっちに来て作ってくれました。木桶の杉の板には全部、名前や住所、完成日などが記されています。杉から造る木桶は100年経ってもしっかり仕事をしてくれるんです。
醤油作りに使われる「六尺桶」。今ではとても貴重なもの!
醤油のもろみ(発酵した大豆や麹)を育てている木桶。
醤油作りに使われる「六尺桶」。今ではとても貴重なもの!
─創業170年以上と長年続いているコトヨ醬油さんですが、昔から変えずに大切にしていることや、逆に改善してきたことはありますか?
小林さん:やっぱり、地元の方が慣れ親しんだ昔から変わらない味を守っていくために酵母菌と向き合っていくことです。ただ、それだけではこのご時世ではやっていけないので、新しい商品を開発しながらどんどんやっています。
─地元と言えば、ホームページを拝見したところ、地元の方と連携した活動もしているとか。
小林さん:そうですね。地域の方に農作業の合間にここに手伝いに来てもらったり、地元の小学校、中学校の給食でうちの醤油を使ってもらったりしているんです。子供の頃からコトヨ醤油の味に馴染みがあると、大人になってもその味は記憶に残ります。以前、小学生の体験授業を受け持っていたことがあったんですが、体験してくれた子供たちが大人になって地元に帰って来たときに、工場の掃除や見学に来てくれる子もたくさんいます。やっぱり、この場所に忘れずにまた来てくれることが嬉しいですね。
─創業から今までの長い道のりの中で、特に苦労した点や印象的だったことは何ですか?
小林さん:私の祖母がよく話していましたが、60年ほど前、第二室戸台風によって工場が甚大な被害を受け、壊滅的になりました。コトヨ醤油は倒産寸前になってしまったそうです。しかし、幸いなことに醬油の桶が蓋になって雨風をしのぎました。弊社では醤油を1年半から2年、熟成させているのですが、そのもろみが無事だったことで「あと2年は生活できる!」と、奮起できました。その間に工場を立て直して醤油を作ったそうです。
あとは、やはりコロナ禍ですね。お得意先の飲食店も全く動かなくなって、会社も稼働できずにいました。それまではこの「笹神喜昜」「笹神延喜(ささかみえんぎ)」という醤油をずっと作り続けていて、手作業で手間暇がかかることもあって新商品の開発まで手がまわりませんでした。しかし、コロナ禍で時間が空いたことや、新潟県の産物を使った商品開発を後押しする県の補助制度をきっかけに、新商品を開発して復活することができました。これがきっかけで、新商品を出すことも大事だと気づけたので、コトヨ醤油にとってはいい機会だったかなと思います。
ピンチの時間を活かした新商品の開発について話す小林さん。
今回の取材を通して、地元とのつながりを大切にしながら日々の醬油作りに向き合う姿勢が伝わってきました。次回は、コトヨ醬油醸造元の魅力的な商品について、詳しくお届けします!
■有限会社コトヨ醬油醸造元
住所:新潟県阿賀野市笹岡1119
電話番号:0250-62-2416
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