はたらく

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2025.04.29

大学生が開店した【今時書店】~その背景や魅力とは?!~

まめっこ
皆さん、こんにちは!チームまめっこです!
今回は、「はたらく」をテーマに無人の書店「今時書店」を営む、中央大学法学部3年生の平 碧仁(たいら あおと)さん(24)を取材させていただきました。
※年齢、学年は2025年4月時点
なんと平さんはまめっこメンバーと同じ大学生!しかも東京の大学に進学して新潟から新幹線で通学しています。なぜそんな交通手段を使ってまでも新潟に残り続けるのか、そして今時書店とはいったいどんな書店なのかお話を伺ってきました。
取材を行う中で、そこには大学に通いながらも自分の「やってみたい」を志し、形にする若き店主の姿がありました。ぜひ最後までお読みください!!

 

 

―今時書店さんってどんな書店なのかをざっくりでいいのでお聞きしてもよろしいですか?

平さん:今時書店は、言わずもがなという感じですが、本があって、店員が滞在していません。お店の扉に鍵が掛かっていて、店内に防犯カメラがあって、現金は置いていない。キャッシュレスのみの対応としています。

一般的な本屋さんで本を買うのとは少し違う体験が、いつもとは違う本の見方や出会い方を生むのかなと思っています。

 

店主の平さん=左=と取材をするいくらちゃんメンバー

 

―なぜこの今時書店さんを作ろうと思ったのですか?

平さん:僕が書店を開いたのが高校3年生のときですが、ちょうどその時、病気をきっかけに将来のことを考えていました。どう働いたらいいのかなと。

そういったことを考えている最中に、たまたま僕の祖母がこの建物を使うことになりました。でも、どう活用したらいいか悩んでいました。建物だけあっても経費が掛かるので、建物を壊して駐車場にしようという案もあったんです。

けれども、この立地を活かすためにも、駐車場は最善策ではないと考えていました。それで、僕が親にプレゼンをして、僕が主体でやってみることになりました。

 

―なるほど。以前はお店とかではなかったんですか?

平さん:そうですね。ビル自体はありましたが、元々は事務所でした。その方が1階から4階まで借りていたのかな。お店とかではないです。

 

―今時書店は、それぞれの本棚にそれぞれのオーナーがいるんですよね?

平さん:今時書店の本は僕が置いているわけじゃなくて、棚一つにつき、一人のオーナーさんがいらっしゃいます。それぞれ棚の上の方にお名前というか、屋号がありまして。自分で置きたい本を選んで、本の値段も決めていただいています。

オーナーさんにはスリップという値札のような細い紙に、本のタイトルと値段、屋号を書いて、本に挟んでもらいます。お客さんが買うときは、スリップを専用の箱に入れてもらいます。

 

―オーナーさんは一般の方なんですか?

平さん:そうですね。オーナーさんは募集や僕からの声掛けでお願いして、一般の方がやってくださっています。基本的には皆さん自分の本業があって、本が好きで本を読まれていた。そういった本好きが、こういうものを紹介したいなということでオーナーになっています。

 

それぞれの棚にオーナーがいる今時書店

 

―今時書店さんでは定期的に読書会を開いているそうですね。

平さん:オーナーさんたちが読書会をやってくださっています。読書会は、自分が読んでいる本を持ち寄ったり、皆で同じ本を読んできたり、基本的には皆さんが自分で本を読んで感想を話し合うという感じでやっています。

今時書店の会員になってくださっている方を中心に4,5人で集まっていますね。

 

―今後やってみたいイベントとか、何か考えていることとかありますか?

平さん:イベントじゃないんですけど、裏に印刷機を置きたいなと思っていて。今時書店を使っている方が印刷機を使って自分で本を作ると。それで、その本を店舗で販売するという活動をしたいなと思っています。

ここで作ってここで販売する。その本を棚とか机の上にたくさん置けたらいいなと。自分の本がこれだけ売れたとか、次はこういった本を作ってみたいという気持ちを後押しする活動ができればと思っています。それで印刷機を探している最中です。

 

―素敵な活動ですね。次に、この書店をどのような人に使ってほしいと考えていますか?

平さん:特定のこういった方というのはないんですが、たくさん使っていただいている地域の方々にもっと貢献できればいいなとは思っています。

この周辺は夜が結構暗くて、お店も遅くまでは開いていません。なので、うちは夜10時ぐらいまでお店の明かりをつけて防犯に協力しています。町内会の方とお話しして、一応避難所として使えるように水や非常食をストックするといった取り組みもしています。もう少しいろいろな形で地域の方に寄与できればいいなとは思っています。

 

書店内の雰囲気

 

―いま東京の大学へは新幹線を使って通学しているとのことですが、なぜ大変な交通手段を使ってでも新潟に残るのか教えてください。

平さん:新潟の人口流出の大きな問題というか、原因として、東京とか関東の大学への進学で新潟から少なからず人が出て、そのまま大学4年間を過ごして、その場所で就職をして、ずっと住んでいくというのがあります。僕も大学1年生の時は東京に住んでいましたが、人口流出の問題を何か、新潟に持ってこられないかなと考えていました。そこで自分を対象とした実験じゃないですけども、方法の一つとして新幹線通学をすることにしました。

確かに新幹線で2時間もかかるので大変ではあります。でも逆に言えば、東京まで2時間で行けて、その2時間で勉強もできるし、こっちで活動もできる。新幹線も一つの方法として可能性はあると考えているところですね。

 

―オーナーさんにとって、今時書店とはどういう存在ですか?

平さん:どうなんですかね。オーナーさんはたぶん、本を出品する場所は今時書店でなくてもカフェとか他にもあるんですよ。ただ、他への出品ならもう少し遅いタイミングだったかもしれない。自己表現の場とか、楽しく使ってもらえているなら役に立てているのかな。そうであればうれしい、くらいかな。

 

―書店を開いたことでよかったなとか、嬉しかったなって思うことはありますか?

平さん:いくつかあります。皆さんが来店した時の記録をノートに書いて残してくれるんですけど……。子連れの方のコメントで、本屋さんはお子さんが泣いてしまうとお店から出なくちゃいけないと。そういうのが難しくて、本屋さんの利用から遠のいていたけれど、このお店は無人だから気にせず使うことができて嬉しいですという内容だったんです。無人であるからこそのメリットがあって、役立てているんだなと感じて嬉しかったです。

あとは、これもノートにあったんですけど、「今日車ぶつけちゃって」みたいな話を書いていて。焦っちゃうじゃないですか、そういう時って。一旦落ち着くためにうちに来ました、と。そういった場所として利用してもらえるのがすごく嬉しいなと思って。

今時書店を開いたときに思い描いていた形の一つとして、皆さんの中に根付いていることを感じられてうれしかったですね。

 

―書店を開業するにあたって、大変だったことは?

平さん: 無人形式のお店を完成させるまでには、たくさん苦労がありました。2019年に開業した当時、古町には無人の古着屋などもまだ存在しておらず、完全キャッシュレスで無人の店舗をゼロから作り上げるのは大変な挑戦でした。

また、店内で販売している本には、それぞれオーナーがいて、どの本を並べるかを決めてもらっています。この無人形式のお店についてオーナーに説明し、理解してもらうことにも苦労しました。「無人の店」という形態に対して、防犯面は大丈夫なのか、具体的にどのような運営形態になるのかなど、多くの疑問を抱かれました。その結果、イメージが湧かずに断られるケースもあり、オーナーに協力をお願いすること自体が難しかったです。

 

―お客さんの声を聞いて、印象深いものはありますか?

平さん:無人の本屋なので、直接お客さんの声を聞くことはできませんが、店内にお客さんが自由に感想を書けるノートを用意しています。その中で印象深かったことは、先ほど話した、車をぶつけてしまった話です。

この書店は、「本屋だけれど、つい1時間くらい滞在してしまうような場所を作りたい」という想いで空間を作りました。SHSという家具店に店内のデザインを依頼したのですが、特に棚にはこだわっています。大きな箱型の構造の中にコの字型の仕切りを組み合わせ、多様なサイズの本が収まるように特注で設計してもらいました。内装全体も木の温もりが感じられる仕上がりになっています。

実際に、車をぶつけた後に心を落ち着けるため、この書店を訪れるお客様がいらっしゃったと知った際には、「一息つける場所として利用してほしい」という開業当初の願いが叶ったことを実感し、とても嬉しく思いました。

 

SHSさんのこだわりの棚

店主の平さんのお気に入りの本

 

大学生と書店の運営で大変なことはありますか?

平さん:たくさんあります。無人のお店だから仕事が少ないというわけではないんです。

まず、ここのお店に入るためには登録が必要です。その登録が僕のところにきて、僕がその情報に鍵のシステムをかけなくてはいけないという仕事があります。登録してもらう度に毎回パソコンで鍵のシステムをかけたことをお客様にご連絡して、当日使っていただくという流れになるのですが、利用者が観光客で、その時すぐにお店を使いたいとなった場合には、僕がすぐ対応しなくてはいけません。なので、日常生活の中でも、お店のことを気に掛ける必要があります。

また、お店の掃除や、店前の落ち葉掃き、お店のレイアウトなど細かいところを綺麗にしないと、本当に人がいないだけになってしまいます。手入れされていて、人が入っているんだなという温もりがないと安心感は出ません。手入れの丁寧さはいつもこころがけていているので、結構大変です。

大学1年生の時は東京に住んでいて、書店の活動との両立が難しいと感じたことが多々あり、新幹線通学を決意した面もあります。

大学に入る時には、パソコンがあればメンバー登録はできるし、お店の掃除は、両親に手伝ってもらおうと考えていました。でも、対応ができない事や、問題が発生するため、自分が新潟にいることが一番だと考えて今に至ります。

 

最後に、これから社会人になって、新潟に帰ってきて書店を続けたいと思いますか?それとも東京で就職して運営をしていきたいですか?

平さん:実は、2年ぐらい前だったら、新潟に帰ってくるとか、東京で3,4年働いて自分の働き方やスキルを学んで、新潟に帰ってくるみたいなことを答えていたと思います。ただ最近は、そのまま新潟に帰るにしてもどんなふうに書店を使って活動していこうかな、東京で3,4年働いてどんなスキルを身につければいいのかなと悩んでいます。

ですが、最終的には新潟に帰ってきて、この店を通じて地方創生や、地域活性化に寄与したいと考えています。

平さんのたすいち

同じ若者として様々なことにちチャレンジしています!

いかがだったでしょうか?平さんにお話を聞いて、同じ大学生として刺激をいただきました。

みなさんぜひ、今時書店さんに足を運んでみてはいかがでしょうか?

 

■今時書店

Web:今時書店

住所:〒951-8056新潟県新潟市中央区花町1985 幸ビル

instagram:今時書店(@imadoki_shoten)

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