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2022.06.29

つばめいと 5年間で学生インターン延べ1000人!学生と地元企業をつなぐ

鮭プロジェクト事務局
日本経済を支える高い技術力を持った中小企業の集積地として知られる燕市で、インターンシップ(就業体験)を通じて学生と地元企業をつないでいるのが、公益社団法人「つばめいと」です。学生が無料で宿泊できる施設もあり、県内外や海外から、多い年で300人近い学生を受け入れています。
企業側は近年、より柔軟な発想や行動力を持った人材を求めています。学生側も仕事を通じて成長を実感でき、より明確なキャリアが描ける企業を志向する傾向にあるようです。ニーズに応え、双方をつないでいる「つばめいと」を紹介します。

  • 1.インターン学生向けに無料の宿泊施設を整備
  • 2.学生、企業のニーズ把握し双方をつなぐ
  • 3.学生に見られることで企業に変化も

インターン学生向けに無料の宿泊施設を整備

 

つばめいとは市の委託を受けて2016年に設立されました。17年に公益社団法人化され、学生が宿泊できる拠点施設「つばめ産学協創スクエア」を開設しました。

 

学生と地元企業とつなぐ拠点「つばめ産学協創スクエア」

 

1階は学生が打ち合わせや座学などで使える広い研修室があります。2階には共有スペースとなるキッチンや食堂の他、寝室、洗面所、シャワールームなどがあり、建設費用は地元企業の寄付でまかないました。学生の利用料はインターンシップの受け入れ企業が負担することで、年間を通じて学生たちが寝泊まりしながら、インターンシップを通じた学びを重ねています。スクエアはJR燕駅から徒歩で5分ほど。宮町商店街のど真ん中にあります。隣は銭湯で、コンビニも近く、車がなくても快適に過ごせる環境にあります。

 

 

学生、企業のニーズ把握し双方をつなぐ

 

学生のインターンシップを受け入れている地元企業は100社に上ります。スクエアに常駐する専門スタッフが、学生と企業の間をコーディネートし、双方を支援しています。代表理事の山後春信さんは「半官半民の組織だから柔軟に動くことができる。学生や企業の求めにスムーズに対応できるのがつばめいとの強みの一つ」と話しています。

 

近年、インターンシップを通じて大学生の採用につなげていく企業が増えています。大学側も学生も、社会に出て活躍できる人材育成に向け、インターンシップを積極的に活用していこうという動きが進んでいるようです。

 

つばめいとの取り組みは口コミで広がり、2017~21年度の5年間で、受け入れた学生の総数は延べ1034人。授業などで連携した大学は、県内では国際大学や長岡技術科学大学、新潟大学など7校、県外は昭和女子大学や早稲田大学、千葉大学や法政大学など8校に上ります。インターンシップを受け入れた学生の所属校は国内にとどまらず、ハノイ工科大(ベトナム)、チュラーロンコーン大学(タイ)、アールト大学(フィンランド)など多岐にわたっています。

 

つばめいとでは学生のニーズに合わせ、大学の1、2年生向けには就業体験型、3、4年生には課題解決型など実践的な学びを得られるプログラムを用意しています。以下、いくつかの取り組みを紹介します。

 

■新潟大学工学部/国際展開インターンシップ(G-DORM)短期プログラム・中期プログラム

新潟大学との共同事業で毎年、王立プノンペン大学(カンボジア)、チュラロンコン大学(タイ)、ラオス国立大学(ラオス)、ハノイ工科大(ベトナム)からの留学生と新大生が、燕市内の企業でグループワークをしています。この取り組みは、学生が選ぶインターンシップアワード2020(マイナビ主催)優秀賞を獲得しました。

 

 

■早稲田大学/地域連携ワークショップ

「早稲田大学×燕市×つばめいと」の3者連携事業。毎年3カ月間、学生たちがグループワークや調査を重ねています。地域課題の解決に向けて、学生たちが「燕に若者が定着するための施策」や「燕を体感できるエンターテイメント施設の建設」など、柔軟な発想でまとめた考えを発表してきました。

 

 

■武蔵野大学/コピーライティングゼミ

コロナ禍となる前は学生たちが燕市に長期滞在し、テーマに沿ってインタビューをし、文字を起こしてコピーを制作。インタビューに対応してくれた方々を招いて発表会を行っていました。昨年度は燕に来ることはできませんでしたが、オンラインと対面のハイブリッドで実施。東京で燕市の製品を広める仕事をしている人に取材し、16ページのパンフレットも制作しました。

 

 

■千葉大学/コンテクスチュアルデザイン研究室

千葉大学工学部の学生たちが、所属する研究室のワークショップとして燕市内の企業が作っている製品のデザインを考えたり、地元商店街の未来の姿をデザインしたりしています。フィールドワークでは燕三条の金属加工の現場を見学。成果報告会には地元企業も参加し、学生たちの提案から多くの刺激を受けています。

 

 

 

学生に見られることで企業に変化も

 

学生たちはインターンシップを通じ、成功や失敗を繰り返しながら、大きく成長していきます。一方で、受け入れる企業側も、さまざまな学びを得る機会となっています。社員が学生に自社の説明をすることで、あらためて会社への理解が深まったり、学生から触発されて経営に対する意識が高まったりするといった効果が生まれています。事務局長の若林悦子さんは「学生から見られることが企業にとって刺激になっています。社長や社員、組織が変化するきっかけにもなっていると思います」と話します。今回の取材当日、評判を聞きつけた花角英世知事が視察に訪れていました。

 

つばめいとの話を聞く花角英世知事(右)

 

2021年には「つばめ産学協創スクエア」の道路を挟んだ斜め迎えに、新たな仕事場を構えたい企業や個人事業主の活動拠点として「宮町シェアオフィス」をオープンしました。新たに発足させた「株式会社つばめいと」の事業として、国の補助金を活用するなどして整備した2階建ての建物です。フリースペースやオンライン用の個室を備え、デザイナーやコンサルタントなどフリーランスの活動拠点になっています。会社の登記もでき、燕市にUターンし仕事の拠点にしている若者も出ています。

 

つばめいとの地道な取り組みが、学生から選ばれる地域、企業になるための流れを創り出しています。

 

宮町シェアオフィス1階のフリースペース

 

■公益社団法人つばめいと

・〒959-1257 新潟県燕市宮町5番8号

・0256(64)8850

https://tsubame-square.com/

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