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周囲の山々にまだ雪が残る4月上旬、南魚沼市塩沢にある塩沢本店を訪ねました。
塩沢本店は、雁木と切妻屋根が続く雪国ならではの町並みと、江戸時代の宿場町の風情が味わえる牧之通りの中にあります。本店の外観や店内は、趣たっぷりのつくりになっています。
塩沢信用組合では「地元密着&地域の応援団」をスローガンに掲げ、さまざまな先進的な取り組みを進めてきました。
■幸せのリンケージ運動
2020年からの新型ウイルス感染拡大では、人の動きが止まり、飲食店や宿泊施設の売上げが激減しました。そこで1個3240円で飲食店や宿泊施設が作った料理のオードブルを購入し、お世話になっている相手に贈る「幸せのリンゲージ運動」を展開。社長から社員へ、夫から妻へ、父親から家族へと、感謝のオードブルを贈る輪が地元に広がり、反響を呼びました。
■取引先の課題解決をサポート
営業担当職員の定期預金集めなどのノルマを撤廃し、担当する事業所の取り組みを支援しています。「思うように採用が進まない」との声を聞けば、地元から県外の大学などに進学した学生向けに、地元企業を紹介する企業説明会を開催。新卒の採用につなげています。「自社をもっとPRしたい」との相談があれば、ホームページの作成をサポートするなど、取引先に寄り添った取り組みを進めています。
■若者向けの超長期51年住宅ローン
長期的な視点から地元の若者を支援しようと、20代を対象に51年という超長期の固定金利住宅ローンも提供しています。「地元の金融機関として、生涯にわたって生活をサポートしていく」(小野澤一成理事長)との考えから生まれた、全国初の取り組みです。
■1人親世帯の高校生向け奨学金
一般からの寄付に塩沢信組からの拠出金を加えて、「魚沼の未来基金」も設立しました。地元の1人親世帯の高校生を支援することが目的です。毎年、多くの高校生に入学準備金3万6千と月額5千円を給付しています。返済不要の奨学金です。
取引先の本業支援や地域の若者支援などで、さまざまな取り組みを実現してきたのが、柔和な笑顔が印象的な小野澤一成理事長です。全国から注目され、講演にも引っ張りだこの小野澤理事長へのインタビューを紹介します。
―全国から注目される取り組みを次々と進めていらっしゃいますね。
塩沢信用組合では顧客満足度ではなく、「顧客感動」を掲げています。その実現に向けて、必要だと考えるさまざまな施策をやってきました。常に、顧客からの信頼、共鳴、共感を大切にしています。
―事業所の採用支援の成果や課題はどうでしょうか?
地元企業の採用支援は一定の成果が出ていると思います。どんなに厳しくても事業所には「人の採用は止めないように」とアドバイスしています。事業所が継続していくためにはやはり人が一番大事だからです。雇用を継続することで、地域経済がしっかりと回っていくと考えています。
―どんな人材が求められていると考えていますか?
最も大事なのは採用した人をどう育てていくかです。人を育てられなければ何にもなりません。ある事業所で新人5人を採用しましたが、技術を教えられるベテランの職人が1人しかいませんでした。そこで職人の技術を映像でまとめて、新人5人がいつでも勉強できる環境を整えました。いつでも映像を見て基本的な技術を学ぶことができるようになり、大変喜ばれました。このように、企業が人材を育てる支援も大事なことだと思っています。
―企業の経営状況が大きく改善しているケースも出ているそうですね。
ただ寄り添えばいいだけではありません。時には社長にあえて厳しい事も伝え、経営が改善されるよう促す努力を続けています。その結果、長年赤字体質だった会社が、生まれ変わる事例も出てきました。例えば業務用の製品を作っていた事業所のケースでは、長年にわたって売上げがじわじわと減少していました。元々高い技術力を持っていましたので、新しく個人向けの製品開発を提案しました。最初はなかなか社長の同意を得られませんし、不安もあったと思います。ですが、個人向けの新製品が徐々に売上げを伸ばしていき、そうすると社長の考えも変わり、今では継続して黒字を出すまでになりました。このような問いかけを続け、変化を恐れずに挑戦していくことが大事だと思っています。
―塩沢信用組合は2023年に創業70周年を迎えます。最後に今後の展望をお願いします。
現在、組合の名称変更を検討しています。伝統を守りつつ、将来に向けてより可能性のある名称にしたいと考えています。さらに営業地区の変更を計画しています。営業地区を拡張したいとの考えからです。我々もどんどん変わっていくことで、進化しながら次の30年、つまり創業100周年につながる体制を作っていくつもりです。
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