まじわる
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山上染物店は、村上市で約360年もの間、染物を営んできた歴史あるお店です。今から360年ほど前といえば、江戸幕府4代将軍の徳川家綱の頃にあたります。現在は14代目の山上あづささんが切り盛りしていますが、今回は13代目山上茂雄さん、玲子さん夫妻にお話しをお伺いしました。
茂雄さんは5歳の時に父親を亡くした時から「跡を継がなければならない」と考えていたそうです。高校は夜間学校に通いながら、父親の兄弟子がいる新発田市まで染物の修行に通ったそうです。さらに高校時代に母親を亡くし、卒業後は住み込みで修行をしていたそうです。
仕事は化学染料の染物が主でしたが、息抜きに草木染をしたところ面白いと感じ、徐々に草木染めをするようになりました。草木染は先祖が残してくれていた本を参考にして学び、技術を習得していきました。
そして、修行を終えて山上染物店の13代目になり、玲子さんと結婚して今に至ります。全国の物産展に出展するようにもなり、仕事の依頼も来るようになったそうです。物産展では染物を知ってもらうというより、「当時はまずは北限の茶どころである村上を知ってもらうということが一番の目的でした」と話していました。(※草木染め→合成染料ではなく天然の染料を使って染めることの呼称)
現在扱っている品目は、はっぴ、のれん、手ぬぐい、タペストリー、ハンカチなど。村上で人々の生活に寄り添いながら、染め物一筋に携わってきました。ほとんどが手仕事で、丁寧に、心を込めてものづくりに取り組んできました。
(作業にいそしむ山上夫妻)
店内に入ると、天井や立派な梁(はり)はすすで黒くなっており、歴史の重みを感じさせます。中を見渡すと、現代の家屋ではあまり見られない形のくぎや窓がありました。昔はエアコンなどがなかったため、天井を高くしたり、玄関から真っすぐ通路を通したり、風通しをよくするなどして涼しく過ごせるように工夫がされたつくりになっています。
(高い天井。立派な梁(はり)はすすで黒くなっている)
入り口から入るとすぐに広間があり、壁には賞状が飾られていました。賞状は1991(平成3)年にもらった県知事賞(技術部門)のものだそうです。入り口から奥までは約40メートルもあり、長い通路には染物をするための長い台や、代々受け継がれてきた型などがありました。
間口が狭く、奥が長い建物は城下町・村上でよく見られる「町屋」と呼ばれる建築方法で、母屋は登録有形文化財に登録されています。江戸時代の建物の特徴を今に伝える趣のある空間の中で、取材中、飼っている4匹の猫たちが顔を覗かせに来る姿にとても癒されました。
(県知事賞の賞状と認定証)
(代々受け継がれてきた染物の型の数々)
山上染物店は、村上茶を染料とした草木染めをしています。なぜ村上茶を染料にしたのか、お店や仕事への思いを聞きました。
-なぜ村上茶を染料にしているのですか。
山上茂雄さん:元々はハマナスの根を染料として染めていました。ハマナスの根がとれなくなり、別のもので染めようと考えたときに、せっかくなら村上の色を出したいと思うようになりました。ある日、知り合いのお茶屋から「のれんを染めてほしい」といわれて、茶葉で染めてみたらいい色が出たので、村上茶を染料にしていくことに決めました。
山上玲子さん:私も知り合いからも静岡で茶葉を染料とした草木染めを見たという話を聞いていました。その話からもヒントをもらい、北限のお茶である村上茶の茶葉を染料として使うようになりました。色も6色出せてとてもいい色が出ますよ。
(村上茶から出せる6色)
(村上茶を染料として染めた帯)
-お店や仕事への思いをお聞かせください。
山上茂雄さん:私の次は娘がお店を継いでくれます。手仕事は何年も積み重ねてできるもの。嫌々やっていても商品にはならないし、楽しんでやれば仕事が好きになると思っています。
山上玲子さん:新しいものを知ることで、昔ながらの作業の良さがわかります。これからも昔ながらの方法でお店を続けていきたいと思っています。
360年の歴史を持つ山上染物店さん。そこには昔ながらの染め方にこだわる情熱と北限の茶どころである村上市への地元愛がありました。私たち若い世代は新しいモノにひかれがちですが、今一度その土地の文化や歴史、昔の良さにも気づくべきなのかもしれません。これからも歴史を刻み続ける山上染物店さんに、村上市を訪れた際は立ち寄ってみて体験し、歴史に触れてみてはいかがでしょうか。
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