まじわる

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2022.12.16

沼垂街歩き②―オーナーの個性が光るゲストハウス・なり-nuttari NARI-

しゃけむすび
皆さんこんにちは! 「まじわる」沼垂街歩き4回シリーズの2回目は、オーナーの個性がとびきり光り輝くゲストハウス「なり-nuttari NARI-」の高江理絵さんに、学生記者・チームしゃけむすびの久住、灰野、中濱がお話をうかがいました。

▼前回の記事はこちらから

沼垂街歩き①―沼垂ビール・マイクロブルワリーの秘密を探る 

 

 

(オーナーの高江理絵さん)

 

―沼垂でゲストハウスを始めようと思ったきっかけは何ですか

 

高江さん:沼垂で始めようと思ったというよりは、新潟県で宿をやりたいなと思っていて、物件探しで空き家として、ここが開いているという情報をもらって、めぐり合って沼垂で始めました。

 

 

―新潟でゲストハウスを始めたいと考えたのは、高江さん自身が新潟出身だからですか

 

高江さん:そうですね。新潟出身だからということもあります。でも20代の頃は、他県に行きましたが、新潟のことがあまり好きではありませんでした。都会と比べて「新潟つまんないな」と思う時期がありました。20代後半から30代くらいになっていろんな所を訪れ、いろんな人と出会う中で、「新潟つまんない」って決めつけていた自分に気づきました。視点を変えたら面白いところがたくさんあったんですね。自分が発掘した新潟の魅力をもっとみんなに伝えたいと思って、「気づける場」を作りたいなと思ったのがきっかけです。

 

 

―新潟の魅力に気づける場所を作ることと、宿をそのための場所にするということがあまりイメージできなかったのですが、宿ってどんな場所ですか

 

高江さん:私自身が見方を変えることができた大きなポイントは、ゲストハウスに行くことで、そこに集まる人と話をして、多くの価値観、いろんな生き方があるんだなと多様性に気づけたところです。新潟でコミュニティースペースはたくさんあると思うのですが、それだと地域に住んでる人中心の場所になってしまいます。宿泊施設となると大部分が、地元以外人が来る場所になるので、一歩新潟県という枠を超えられるからです。むしろ全国からも来るし、日本を越えて海外からも来る可能性があるじゃないですか。宿泊施設って、誰でも泊まれる。つまり、地球に住んでる人なら誰でもそこに行く可能性があるからかな。いろんな人が集まる宿泊施設が新潟にあったら、新潟に住んでいる人たちにも、枠を超えて、面白い人たちに出会ってもらえる。価値観を変えるほどの出会いが生まれるんじゃないかなって思って宿泊施設を選びました。

 

(今回取材を担当した(左から)久住、灰野、中濱)

 

 

―実際に今まで宿泊施設を始めてから、県外の方が多いですか

 

高江さん:そうですね。ほとんど県外の方が多いです。みんな旅行で来た方が泊まります。

 

 

―県外の方々が新潟の方たちと関わる機会はありますか

 

高江さん:「沼垂なり」にはバーカウンターがあります。地元の人でも利用できるところなので気軽に飲みに来る、気軽にお茶しに来る、という感じで立ち寄れる場所にもなっています。バーを利用する人と、宿泊施設として利用する人が、このリビングで出会うという感じです。

 

 

―まさに先ほど仰っていた、人が繋がる拠点になっていますね。今回、記事のテーマが「つながる」だったので、まさに宿の役割が人をつなげる場になっていると思いました。

 

―新潟の魅力に気づけたというお話がありましたが、今思う新潟の魅力は何ですか

 

高江さん:まず、見方を変えた自分がいたんです。もともと「嫌だね」「つまんないな」と思っていた物事の見方が、都会と地方を比べていたんですね。人が少ないとか、交通の便が悪いとは、流行が一歩遅れて入ってくるなどを比べていました。

 

「都会にあるものが新潟にはない=つまらない」という解釈でした。その後、いろいろな経験や人との出会いの中で、価値観の多様性に気づき、比べることを止めました。新潟と向き合い、「私が見つける新潟」を表現しようと思いました。多くのお店に入ったり、お話をしたりするのですが、一人ひとり熱い思いを持ってこの地で営んでいるんだなと気づきました。新潟の魅力ってこういうところにあるのかもしれないと思いました。静かだけど熱い思いがある。こっそり熱いみたいな感じ。自分の中に秘めていて、着実に一歩ずつ進めていって完成させている姿が魅力ですね。

 

 

―バーをやっていると地元の方が来られると思いますが、そういう方々も、自分の思いがある?

 

高江さん:自分の思いを持っている人もいます。でもそこに優しさがあるから、周りに対して考え過ぎてしまい、自分が動けない方が多いのかなと思います。

 

 

―高江さんが宿を始めるとなったときは、勢いのままにという感じでしたか?

 

高江さん:決めてからは早かったです。決めるまでは、悶々(もんもん)としていました。30歳になったときに仕事を辞めて、考え方を変えました。転機でした。それまでは、人の目などをいろいろ考えていました。このままレールに乗りたくないと思い、自分の心に正直に行こうと、この道を選択しました。

 

 

―それまでのキャリアをリセットし、新潟に戻ることは勇気がいると思いますが…

 

高江さん:私が戻ってきたときは特に目標がなかったですね。大学で上京して、東京で27歳まで働いて、新潟に戻ってきました。当時は目標がなくて、前の仕事の区切りが着いたので、次どうしようかなと思いました。新潟で結婚して、親もとで結婚生活を送ることが楽だし…。そんな考えが自分の中にインプットされちゃってて、結婚適齢期でもあり地元に戻ろうと思いました。でもその考えは、世間一般的な話であって、全部自分にあてはまるわけではないと思ったんです。「これで私の人生終わっちゃうのかしら」、「私が私でなくなっちゃう」、と生き方を考えた時期がありました。30歳を機に「自分らしく生きよう」と決めました。

 

 

―沼垂という地域で宿をしていて、高江さんが感じる地域の特徴は?

 

高江さん:新潟駅から近いのですが、沼垂に一歩足を踏み入れるとノスタルジックになる所が不思議だなと感じています。沼垂テラス商店街があるのですが、そこはもともと市場をやっていた空き家でした。そこにお店をやりたい人が集まって一人ひとりが自分のお店をリノベーションしてお店をやっています。出店している人の中には若い人もいますし、沼垂で親の代からやっていますというお店もあります。銭湯、お豆腐屋、八百屋もあるので生活するのに困らない地域だと思います。

 

 

―他のお店の方々とのかかわりもありますか

 

高江さん:あります。この地域で、月に一回、朝市というイベントを行っていて、そのイベントを中心に商店街のメンバーとイベントを行ったり、個人のお店同士でコラボしたりしています。

 

 

―そのようなときはどういった関わり方をするのですか?

 

高江さん:「沼垂なり」は会場として関わっています。出店を希望する人が、ここを会場としてイベントを行います。商店街にお店を持っていなくて、これからお店をやりたいという方々を招いたり、違うところでお店をやっていて、もっと周知してもらいたいからという理由で出店する人もいます。

 

 

―実際につながった・関わった・こんな人たちに出会えたというエピソードはありますか?

 

高江さん;それこそ出店してくれた方々が、他のイベントの時に「なり」を紹介してくれて、どんどんつながっていくということがありますね。

今つながっている人たちは、お店を始めた時につながった人たちが多いですね。物件を見つけて、実際に改修工事などを始めるまでに時間が半年くらいあって、その時期に、新潟中を自分のお店の宣伝も含めて回りました。いろんなお店に行ったり、イベントに行ったりして、名刺を作って、配ったりしていました。その頃にたくさんの人と出会いました。

 

 

―自分の中で大きかったなと思う「まじわる」は何ですか?

 

高江さん:宿泊業なので、新潟県外から人が来て、その人達が新潟のことを知ってくれる場になるんだろうな、と当初は考えていました。実際、オープンしてイベントスペースとしての利用が多い。新潟に住んでいる人が多く利用して下さるという点で、意外でした。

 

自分で店を持ちたいと考えている方に予行演習として定期的に場所を貸すこともあります。最初はお客さんが来ないのですが、自分が発信する、私も発信するということを繰り返していると、どんどんお客さんも増えてきて、最後は予約が殺到する。お客さんもたくさん来てくれて、惜しまれながら「沼垂なり」でのカフェ営業を終える。そんな光景を見ていると、宿泊施設の顔のほかにも、新潟に住んでいる人たちの夢を叶える場になれているんだなと気づきます。うれしかったですし、予期せぬ出来事でした。

 

お店を持つことは準備が多く、相当の覚悟と決意、勢いがないとできないと思っています。また、10年20年お店を継続することって一握りだと思っていて…。自分のお店を持ちたい方には、この場所が一歩踏み出すための試行錯誤の場になっていることが、良いなと思っています。

 

最近は「私らしく生きる」、「好きなことを仕事にする」ということが、「好きなことを仕事にしなきゃいけない」に変換されているんじゃないかと…。そんなに好きでもないことを「私これ好きです」と言って、仕事にしようと頑張って。本当は違うと気付いた時には、もう戻れない、疲れちゃう人が多くて。「目標を決めすぎない」「好きを一つにしない」。20代のうちは好きがコロコロ変わって良い。30代になったら、ある程度決めて社会人としての形や、立ち位置の確立に着手していくといいなと思っています。20代でそれを行うと苦しくなってしまうから、そのほぐす場として「一回あなたの好き確認してみたら」「違ったら変えればいい」いろんなことにチャレンジする期間だと思っています。そうすれば30代40代の生き方が決めやすくなりますね。

 

 

 

 

次回は沼垂テラス商店街をご紹介します。ご期待ください。

 

「なり-nuttari NARI-」高江理絵さんのたすいち

「好き」を1つに決めない

■「なり-nuttari NARI-」

住所:〒950-0075  新潟県新潟市中央区沼垂東2丁目11−31

TEL:025-369-4126

WEB:http://nuttari-nari.com/

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