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2024.11.08
大原鉄工所では、「ローカルニッチでありながらグローバルな仕事をする会社を目指す」ことを掲げていますが、地域とどのような連携を図っているのか教えてください。
当社はニッチグローバルを掲げ地域との連携を図っています。長岡造形大学、長岡技術科学大学、新潟工科大学と連携して製品の開発に取り組み、具現化していこうという動きをしています。
下水処理施設の設計・設備導入は新潟県内を重点地域として展開。一方、リサイクルプラントやバイオガス発電プラントなど環境の分野は日本全国で手掛けています。
水処理施設や粉砕機など数ある製品を手掛ける中で共通する技術やポイントなどはありますか?
大きな機械に共通点が多いですね。当社は鉄工所という元々の特性を生かし、鋼材を扱う技術を持っています。産業機械を作る際、強度や安全性をどのように担保して設計したら良いのかなどノウハウがあります。
幅広い事業領域の中で現在力を入れている点について教えてください。
当社は社会に貢献する会社を目指しており、人々の生活に役立つ仕事、地球環境保護に関わる仕事、というのが根本にあります。近年は特に廃棄物処理プラントやバイオガス発電設備に力を入れています。
まず廃棄物処理プラントですが、当社ではごみ全般を扱っています。市町村が扱うごみ、粗大ごみ、ビン、カンなどです。最近では長岡市の中之島地域や五泉市で導入していただきました。粗大ごみなどは、投入するとホッパーと呼ばれるもので受け、コンベアで破砕機に搬送して破砕します。その過程で、有価物の鉄やアルミといった金属系のものを選別します。粗破砕機、細破砕機など用途や目的によって破砕機の種類は異なります。現在では焼却炉を併設したような形で粗大ごみプラントを提案する形が多いです。
このほか、民間施設では、ペットボトルの再利用プラントやビン・缶、建設廃材の処理プラント等、様々なリサイクルプラントの設計・施工を行っています。
また、我々のバイオガス発電機は新潟県の下水処理場にも取り入れられています。下水処理の過程に出てくる汚泥をタンクの中で加温しながら、発生するメタンを発酵、メタンガスを取り出して発電しています。こちらの電気が電力会社に非常に高く買い取ってもらえるので当社の方でも積極的にそういったプラントを作ろうと提案しています。
南極で使用する雪上車について、南極の過酷な環境に対応するための工夫について教えてください。
やはり雪上車は過酷な状況で使うので、壊れた時に直しやすいように、シンプルな構成を心掛けています。雪上車の油圧の部品、エンジンなどは他社からの購入が多いです。それらの部品に関しても信頼性が保証できるものを使用することを心掛けています。細かいところにも気を配ることで事故や故障のリスクを限りなく少なくするよう努めています。
南極で動かなくなった際のメンテナンスや災害時のサポートはどうなっているのか教えてください。
当社の社員が南極観測隊の隊員として参加させて頂いており、トラブル時は現地で修理しています。また、観測隊の設営メンバーには当社での研修を通し、雪上車の製造過程を見てもらっています。メンテナンスのトレーニングなどを行うことで、全面的にメンバーをバックアップしています。ただ、大きなトラブルになると現地では手に負えない場合もあります。その際は、定期的に当社に持ち帰ってメンテナンスを行っています。
設営メンバーは多様な企業のメンバーが入っています。当社だけでなく発電機の機械メーカーや住宅ハウスメーカー、プロの料理人、医者といったさまざまな業種の方々が連携して設備を維持管理しています。
日本唯一の雪上車メーカーですが、事業着手のきっかけについて教えてください。
戦後間もない1951年に試作機を作りました。今では雪が降れば除雪車が道をきれいにしますが、当時はそういった車が少なく、孤立してしまう集落もあったと聞いています。そのような中で新潟県から雪上車を作ってくれないか、という依頼があり作製することになりました。その後、ゲレンデ整備車として札幌オリンピックの時にオフィシャルサプライヤーとして納めさせていただきました。
雪上車メーカーは世界に3社しかない中で、特に南極観測用の雪上車について“大原鉄工所ならでは”という点について詳しく教えてください。
大原鉄工所から南極に派遣した社員は現時点で在籍しているものでも10人以上いますね。その中でも5回以上、南極へ出向いた者もいます。他の方々より南極のことをよく知っているので、その社員からフィードバックをして改良することができる。それが大原鉄工所ならではの強みかな、と思います。
南極の観測業務では、日本を一度出発すると1年半程帰れないと聞きました。南極で過ごす中で特に苦労した話はありますか。
同期の仲間が南極に行っていたのですが、大変というよりは比較的楽しんでいました。スノーボードを持参して仕事の合間で滑ったり、オーロラも見放題だったりしたそうです。会社の中で南極に行くメンバーを決める時も、「私、行きたいです」と挙手制で決まることが多いですね。
ただ、環境は過酷であり、凍傷などの危険な部分はしっかりと気を付けています。また、医者が帯同しているとはいっても、狭い空間での共同生活になるので、病気にも配慮しています。
それでも、居住する基地の中にバーがあったり、定期的にイベントが開催されたりと、楽しく過ごすための工夫をしているみたいで、つらい声よりも楽しい声を聞くことが多いです。整備のために雪上車が南極から戻ってきた時には、内部にいろいろな棚が追加されており、さらに皆が過ごしやすい空間にパワーアップされていました。
オーロラ見放題、憧れちゃいますね!
長岡造形大学と協力して、南極用雪上車のデザインをしたと聞きました。教育機関とのコラボレーションによって、生まれるものはありますか。
若い方のアイデアを採用できるところはとても良いですね。バイオガス発電の開発も長岡技術科学大学と一緒に取り組んでいるんです。民間企業1社では実現できないことでも、教育機関と連携することで、自治体の協力が得やすくなったり、つながりが増えたりします。
学生と関わってみて、印象的なことはありますか。
以前、下水処理場で発生する熱を利用して農作物を育てる取り組みを学生と一緒にやっていました。最初は、希少な鑑賞用の藻を育てていたのですが、いつの間にか「わさび」に変化しており驚いたことがありました。農作物の価値や育成のし易さなど様々な角度から試行錯誤の結果だと思いますが、これは学生の柔軟な考え方から出てきたアイデアなのだと思います。
観賞用の藻から食用のわさびとは、大変化ですね…!
国際協力機構(JICA)の支援を受けて、フィリピンでのバイオガス発電の普及を進めているとのことですが、今後の展望はありますか。
私は実際にフィリピンに行って、調査してきました。フィリピンのある村では、豚を飼育していて、豚から出る糞尿を通称ラグーンと呼ばれる池に、処理せずただ流すんです。そして糞尿が街中にあるラグーンにたまっていくという現状がありました。匂いがきついんです。そういった中で、バイオガスの技術が役立てられないか、という話があったんです。廃棄物を電気に変えられたら良いのではないかという考えです。しかし、フィリピンでは設備投資するお金を集めることが難しいという結論になりました。JICAの支援を受けているので、政府開発援助(ODA)などさまざまな方法を考えてはみたのですが、難しかったです。
ただ、社会情勢の変化もあるので、外国でバイオガス発電を活用できないか、模索していきたいと思っています。日本とは気候も予算も違いますし、土地に合わせて「安く簡易に」という作り方を意識したいです。
学生や若い世代へ向けてメッセージをお願いします。
学生のうちに一生懸命やったことは、必ず未来に生きてきます。会社と家の往復の生活ではできないことが学生はできます。やりたいことをどんどんやって、とことん突き詰めていってほしいです。
高橋さん自身は学生時代の経験を生かされていますか。
私は子どもの頃からモノを分解するのが好きで、おもちゃを分解して構造はどうなっているんだろうと見るのが好きでした。結果、直せなくて壊していましたが(笑)。大学で車が運転できるようになってからは、車にも興味が沸き、サーキットを走っていました。学生時代、車の改造は憧れでしたね。そんな自分の「好きなこと」が今の仕事にも少しは生かされているのかなと思います。
田村 優衣(新潟大学4年)
日本唯一、世界にも3社しかない雪上車メーカーで、新潟県民としてこのような会社が新潟にあることを誇らしく感じました。南極での生活は想像もつきませんが、調査のため南極に仕事で行くことは、なかなかない貴重な経験だと思います。また、大原鉄工所様は受注生産を基本とし、技術力を持ってお客さまの要望に合わせた多様な機械を製作している点が魅力的でした!髙橋さんが、技術の話では楽しそうに生き生きと話されていて、「好きなこと」が仕事につながっているのは素敵であると感じました。
渡部 亮太(中央大学2年)
今回の取材を通じて、大原鉄工所様の南極雪上車製造にかける情熱と深い取り組みに感銘を受けました。特に、南極の厳しい環境を考慮し、シンプルな構造でありながらも高い耐久性を兼ね備え、現地でのメンテナンスが容易になる工夫には感動しました。また、設営に関わるさまざまな企業の協力体制についても初めて知り、大変勉強になりました。貴重なお話を聞かせていただき、誠にありがとうございました。
社名:株式会社 大原鉄工所
所在地(本社・工場):新潟県長岡市城岡2−8−1
TEL :(0258)24-2350(代)
代表:代表取締役社長 大原 興人
創立:明治 40 年 10 月
設立:昭和 15 年 3 月
社員数:160 名
【営業品目】
リサイクルプラント機器
バイオガス発電設備
下水処理設備
石油ガス・地熱掘削設備
発電用・農業土木用・河川用水門
ゲレンデ整備用雪上車
多目的装軌車
南極観測用雪上車
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