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2025.03.10

「山崎金属工業①」カトラリー製作過程とモノ作りへの想い

YOIFURE(ヨイフレ)
新潟県燕市にある金属洋食器のメーカー「山崎金属工業」を取材させていただきました!
ヤマザキと言われるとどこを思い浮かべるでしょうか?海外ではヤマザキと言われれば山崎金属工業のカトラリーを思い浮かべられるほど人気のある企業です。なんとその企業が新潟にあります!
山崎金属工業さんは100年以上の歴史があり、ノーベル賞の晩餐会の洋食器を製造するなど世界に誇る技術に引き付けられました。
そんな山崎金属工業さんの魅力について国内営業部中村雅行さんからお話を伺いました。今回は3回の連載に分けて深掘りしていきます!

  • 1.山崎金属工業はどんな会社?
  • 2.製造工程について
  • 3.制作過程と意図を伝える難しさ
  • 4.想いとやりがい

1.山崎金属工業はどんな会社?

 

山崎金属工業は1918年創業で、今年106年目になる金属洋食器のメーカーです。

主にステンレスを材料にした金属洋食器を作っていて、国内外に展開しています。創業当初はまだ機械が全くなく、燕市で有名な鎚起銅器(ついきどうき)という伝統工芸品と同じ方法でとんとんと叩いて手作業で洋食器を作っていました。

創業者が山崎文言(やまざきぶんげん)という鎚起銅器の職人で、たまたま入った工房がちょうど洋食器を製造しており、そこで洋食器を作り始め、1918年に独立しました。

 

弊社で有名なところですとノーベル賞の晩餐会の洋食器を作っています。ということで皆さんに知られる会社にはなっています。

 

特に日本国内よりも海外の方が知名度としては高い会社です。理由として、創業当初より海外向けの商品を多く作って、海外に目を向けて製造していたことが一つです。1980年にニューヨークに現地法人を立て、そこで北米、中米、ヨーロッパ向けの洋食器を販売、輸出を始めました。それまではフランスやドイツの老舗メーカーからOEMで製造委託を頂いて商品を作っていました。

1980年にアメリカで現地法人を立ててから、オリジナルヤマザキというブランドで海外展開を始めたこともあり、海外ではヤマザキと聞くと、洋食器、カトラリーのデザインメーカーとして知られています。

1991年のノーベル賞晩餐会に向けたカトラリー製造の依頼を頂いた後、海外だけでなく日本国内でもより力を入れていこうと展開を広げました。

 

最近では、JR九州さんの寝台列車「ななつ星」やJR東日本の豪華列車「トランスイート四季島」のカトラリーを担当しています。また、去年新潟で行われた、G7関係閣僚会合の記念品として、山崎金属工業の商品を贈り物として使っていただきました。

このように弊社の商品は決して安い部類の商品ではありません。「形はそんなに変わらないのになぜ値段が違うのか」とよく言われます。しかし山崎金属工業のカトラリーは、安く手に入る商品と比べると5倍の工程数があります。それだけ手間をかけて作りこんでいるからこそ、高単価でもお客様に満足いただいているのだと思います。また、私たちも誇りを持って高い品質のものを作り続けています。

 

 

2.製造工程について

 

弊社の商品を作る過程において、スプーンの表面を磨くという工程だけで4工程かかります。安価品は表面の手間を省くと、6~7工程でできています。その中で弊社は平均30工程、多くて50工程かかります。

またスプーン1本作るのに、機材を10以上変えており、スプーンの素材に合わせて異なる機械を使用しています。

スプーンの磨き方や製作の仕方も職人によって異なります。マニュアルもあるのですが、長年の職人さんはそれぞれやり方が異なっています。

自動研磨機という機械がありますが、自動ですべてを磨けるわけではありません。機械では磨ききれない部分を人の手で一つ一つ磨いています。側面を含めて全体で一つのデザインなので、どの部分も細かく検査しています。最終検査では1本1本手で触り、汚れやザラザラとした部分はないか見ています。

綺麗に磨くほど汚れが目立つので不良品が出やすくなります。鉄は痛むと鉄臭くなりますが、よく磨いたものは臭くならないです。

 

弊社では一日約3000本、月に3~4万本のカトラリーを作っています。その中で傷や汚れが出たものはリサイクルが可能なので、また同じ道具に変わります。リサイクルできないような本当の不良品はそのうちの1~2%です。スプーン1本1本に弊社の職人40人分の思いがつまっているため、不良品が出たときはとてもやるせない気持ちになります。

一つの商品を作るうえで、磨く人や削る人、確認する人などそれぞれの段階で多くの職人さんが携わっています。ほかの人が手を加えたものに、さらに自分が手を加えて商品の完成に近づけていく。大きなつながりの中で商品が生まれるので、職人のチームワークが大切になります。

 

 

製作したスプーンに傷やざらつきがないか一本一本最終確認する様子

 

 

3.制作過程と意図を伝える難しさ

 

素材によって研磨やプレスなどの方法が全く異なります。弊社が使っているのは9割方ステンレスですが、チタンやアルミもあります。柔らかい素材だと、加工したときに大きく広がって無駄な部分が多く出てしまうので、アルミはアルミ専用の金具を使うといった方法を用いています。また、プレスをする力加減の調整は職人さんの腕の見せ所です。プレスで1人前になるのに5年はかかると言われており難しい作業です。

手作業ばかりであれば、伝統工芸のようなイメージを持たれ、汚れや傷なども風合い、歴史を感じるなどと言われることがあります。

 

しかし山崎金属工業の商品は伝統工芸より日用品としての比重が大きく、半手動半機械で作っています。機械だけでは細かな部分までできないので手作業も不可欠です。とはいえ、日用品として販売するには傷や曇りは不良品となります。また、デザインにもこだわって伝統工芸を意識している商品も作っていますが、少しの傷でも交換となります。伝統工芸品のようでありながらも、伝統工芸のような手作りらしい風合いにすると傷ものとされてしまうのが歯がゆく難しいところです。

 

スプーンを研磨する様子

 

 

4.想いとやりがい

 

スプーンなどの道具は生活を豊かにするためのものであると考えます。その人の生活をどれだけ良くするか、道具であっても料理の引き立て役として豊かな時間を提供していきたいと考えています。

モノづくりの魅力としては、商品を通じてお客様とつながっているのを感じることです。職人さんは一人前に磨けるようになるまでに10年、プレスだけでも5年かかります。このように時間をかけて苦労して技術を身につけるので、お客様から直接評価され、喜ばれるのは大きなやりがいにつながります。

 

次回はノーベル賞晩餐会の影響や国内外でのコミュニケーションについて深掘りしていきます!お見逃しなく!!

 

 

■山崎金属工業株式会社

〒959-1263新潟県燕市大曲2570

WEB: 山崎金属工業株式会社

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