はたらく

WORK

2022.11.18

きたじょう工房①|まるで秘密基地「テントの総合病院」

shake hands(シャケ・ハンズ)
近年、アウトドアやキャンプの人気が高まるなか、今回お話を伺ったのは柏崎市でテント修理を請け負っている「きたじょう工房」のオーナー、小暮裕一さん。連載第一回目は小暮さんがきたじょう工房を始めるきっかけと現在の仕事についてご紹介します

―キャンプとの出会い、今の仕事を始めるまでを教えてください

 

小暮さん:キャンプとの出会いは約30年前の23歳のとき、仲間に連れてってもらったのがきっかけです。今ほどキャンプは流行っていなかった時代、静かなところに遊びに行くっていうところに魅かれてキャンプを始めましたね!その時は六日町方面に遊びに行くことが多かったです。

 

(雪中キャンプを楽しむ小暮さん{場所:山形蔵王高原})

 

 

―学生時代はどんな勉強をしていましたか?

 

小暮さん:柏崎の工業高校に行って、それからシステムエンジニアになるために情報処理の柏崎の学校に行きました。でも、卒業と同時にWindowsが出て、プログラムを書くのもみんな、Windowsがやってくれるようになったのでシステムエンジニアにはならずに、親父と二人で会社を立ち上げることになりました!

 

(「きたじょう工房」そこはまるで秘密基地)

 

 

―きたじょう工房を始めるまではどんな仕事をしていましたか?

 

小暮さん:最初は自動車のシートや革製品といった「厚物類」を作っていました。 ただ、仕事が手薄になってきて、何か新しい仕事はないかなと探していた時に、会社に出入りしていたミシン屋さんに、新しくテントを作ろうとしている会社を紹介してもらいました。その会社にテントの型紙を作って試作して持って行ってたんです。それが認められて量産を頂き、そうしたらその会社から、次はテントの修理もお願いされました。あくまでも「対会社」としてのお付き合いで、今みたいに各個人のお客様からの修理を引き受けていたわけではありませんでした。その後、ミシン屋さんから紹介された会社のテントだけにこだわらず、いろいろなメーカーさんのテント、全国各地の個人のお客様のテント修理をインターネットやキャンプ場での口コミで引き受けるようになって今に至っています。

 

 

―縫製業での経験がテントを作ったり、修理したりすることにつながっているんですか?

 

小暮さん:いや、全然違います!車のシートとテントを縫うのじゃミシンも違うし、縫い方も違うし、僕としては全く初めての試みでした!趣味でテントを扱ってきたからこう縫うんだろうなっていう事はなんとなく分かっていましたけどね。専門的なノウハウを教えてもらったのは片貝(小千谷市)の社長さんで私の師匠です。テントを作ったり、修理したりすることを連日夜遅くまで叩きこまれ、辛い思いもしましたがそれが今の私の基礎となっています。

 

(ミシンを使って作業中の小暮さん)

 

 

-きたじょう工房はテントの総合病院とおっしゃられていましたが、具体的に教えてください

 

小暮さん:切れたり溶けたりしたテントの修理をする「外科」の仕事もやりますし、経年劣化等の撥水加工をしたりテントをメンテナンスする「内科」の仕事もあります。後は、新しいテントを生み出す「産婦人科」みたいな仕事もするし、本当に病院のように何でもやりますね。

 

 

-今までで一番大変だった重症患者のテントはどんなものでしたか?

 

小暮さん:ファスナーの修理が一番大変でしたね。テントのファスナーってすごく長いので、それを全部外して、まっすぐ縫い合わせて…、となるとかなりの時間が必要になります。そこに防水テープを貼らなくてはいけないから、地味で手間のかかる作業になります。

 

(きたじょう工房はテントの総合病院)

 

 

-最近は「精神科」(テントの相談)のお仕事もされているとお聞きしました。

 

小暮さん:そう、だんだん馴染みのお客さんになってくると、「次はどのテントを買えばいいでしょうか?」なんてメールが届くようになりました。少し返事に困ることもあるけど、それだけ第一人者のように信頼されているのかな。最近は海外からも連絡が来ます。中国語とか英語とかで。僕は「日本で販売しているテントの修理をする」、と決めているから対応できないけれど、そこまで僕の仕事が広まっているって嬉しいことですよね。

 

 

-お仕事をしていて嬉しいと思う瞬間はどんな時ですか?

 

小暮さん:お客さんから感謝していただく時ですね。普通にご依頼のメールが来て見積もりをして、修理をさせて頂き、お金が振り込まれてから、修理したテントをご返却するのですが、その後、御礼でランタンやクーラーボックスをもらったり、全国各地のお客さんからはご当地の名産品が届いたりするんですよ。修理した後、お客さんから「昔、親父と一緒に遊んだテントがもうボロボロで捨てようと思った。でも、修理してもらって、当時を思い出すくらいの仕上がりでありがとうございました!これはおやじの形見なんです。」って御礼メールが来たことがあって、しびれましたね!その時はホッとするし、嬉しいし、誰かのお役に立てたかな?と思います。

 

他にも嬉しいことはあって、昔自分が作ったテントが、修理で手元に戻ってくることがあるんです。もう20年以上前に作ったテントが。わが子に再会したような気持ちになるし、こんなに長く使ってもらえていたことにも感動します。

 

(小暮さんの私物と、いただいたお礼の品も)

 

 

-テント修理ってすごくサステナブルな取り組みですよね

 

小暮さん:テントを廃棄するって決断するのは結局、ユーザーなんです。メーカーから修理を断られたテントが藁をもすがる思いで僕のところに来て、復活するとやっぱりお客さんは喜んでくれます。そして次に誰かの手に渡ってまた綺麗に長く大切に使ってもらう。良いテントは後世に伝えて欲しいものです。

 

 

-アウトドア界の縁の下の力持ちですね!

 

小暮さん:各メーカーの社長さんたちから、「お前がいるから業界の層が厚くなった」とよく言われます!経年劣化でテントがおかしくなった時は、僕のところに持ってきてくれればいいから、安心してお客さんに売れると。僕は、テントを長く使ってくれる人ほど、大切にしなきゃいけないと思っています!

 

 

 

 

シリーズ「はたらく」きたじょう工房さんの第1回連載はまるで秘密基地「テントの総合病院」のしごとを伺いました。次回は小暮さんの今後の展望について伺います。お楽しみに~。

 

■きたじょう工房

〒949-3732 新潟県柏崎市北条2095-1

https://www.kitajokobo.com/

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