つながる
CONNECT
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―「野きろの杜」は人々の交流を大切にされていますが、交流を通じてどのようなコミュニティ形成や効果を考えられていますか?
石田さん:僕たちは木材の業界を繋ぐコミュニティづくり、家を建てる人たち同士のコミュニティづくり、そして地域と「野きろの杜」のコミュニティづくりという、3つのコミュニティです。
ハード面である建築物だけをしっかりするのではなく、その場をつくる人や雰囲気といったソフト面にもしっかり気を配ることが、街を暮らしやすくするには大切です。
石田さんに熱心に取材をするいくらちゃんメンバーの姿
─3つのコミュニティについて、詳しく教えてください。
石田さん:まず、木材の業界をつなぐコミュニティについて。
林業は「川上・川中・川下」というように、よく川に例えて捉えられるんですね。木を切り出してくる人たちを川上、製材(木の加工)をやっている人を川中、そして家を建てる人たちのことを川下と言います。
この「川上・川中・川下」が、最近までつながっていなかったんです。業界としてのコミュニケーション、コミュニティをつなげて街を作るというのが、この「野きろの杜」プロジェクトです。
林業に携わる人をつなげることで、建築業界として循環型林業に向けた新潟県産材の利用拡大が一層進んでいくと思います。
次に、エンドユーザー(建てる人)同士のコミュニティです。
「野きろの杜」は景観に関してルールを設けることで、住む人の世界観を合わせたいという思いがあります。
また、「はじめまして」の人が来ても、ある程度のコミュニケーションができるくらいのつながりを作りたいんです。
アパートで一人暮らしをしていると、周囲の一軒家で誰が住んでいるか分からないということが多々あると思います。でもお互いに知っていれば、日ごろのコミュニケーションだけでなく、例えば災害に遭ったときに助け合えますよね。
「アウトドア」や「キャンプ」といったキーワードが好きな人たちが集まってキャンプをすると、初対面でも挨拶が生まれたり豊かな時間になったりします。こうしたことを通して、住民誰もが馴染みやすい環境を作り出したいと思っています。
最後は、地域と「野きろの杜」のコミュニティについて。
急に新しい分譲地・コミュニティができると、もともとの地域にどう馴染んでいくかが課題になることがあります。
その課題を解消するために、月一回「まちびらき」といって道の駅みたいに開放する機会を設けています。
野きろの杜に住む方以外でも誰でも参加できる飲食イベントを行ったり、クリスマスイベントでサンタクロースの格好をした自治会長さんが子どもにプレゼントを配ったり。11月はアーティストと地域のたくさんの子たちが一緒に作品を作るアートイベント、最近はクリスマスツリーの飾り付けを行いました。
地域全体で子どもを育てるという意味で児童館や和納地区のコミュニティスクールと連携もしています。
地域の一員としてコミュニケーションは積極的に図っています。
─子ども連れの方が来て親同士の繋がりが出来たり、子どもを主役にしたイベントがあったり、どの世代の人でも楽しめる環境があるんですね。
子どもたちがアーティストと一緒に描いた想いのこもった作品
―生活している住民やその風景を見て、特に印象に残った出来事や、野きろの杜を作って良かったと感じる瞬間を教えてください。
石田さん:まちびらきや会社の周年祭に野きろの杜の住人を無料招待しているのですが、賃貸に住んでいる人同士、賃貸と持ち家の住民が垣根なくコミュニケーションしている際の笑顔を見たときです。子どもたちが仲間で走り回っている姿もうれしいです。野きろの杜に携わって良かったと感じる瞬間です。
―野きろの杜の住民が増える中で、今後やってみたいことや展望などはありますか?
石田さん:今後、ゲストハウスを作る予定です。住民の家族や友人が泊まることができますし、野きろの杜に住む体験もできるようになります。
他には、田園風景が見渡せるようなサウナ作りを計画しています。
また、農業が盛んな地域であるため、農業を絡めた計画を増やしたいと思っています。
現在、月1回でマルシェを行っていますが、生産者と距離が近く、朝市のマルシェにまず出していただいています。採れたてで一番新鮮な野菜を買えるんですよ。
住人が増えて朝市が活発化してくれば、ショップなどが並ぶ商業エリアの「Mall Site野きろ」が、さらに住民の生活の一助となる場所に進化していくと思います。地元農家の方など様々なつながりが生まれる場所にもしていきたいですね。
―Mall Site野きろでは、お花やチャイなどを販売する「ibuki」やスイーツのお店「verich」など、素敵な店舗が並んでいます。こうした店舗はどのようにして出店することになったのでしょうか?
石田さん:「ibuki」は、近隣の岩室出身のお店のオーナーがお花屋さんと飲食をしたいということで、野きろの杜の店舗募集の際に立候補されました。
ここで出しているコーヒーは、新潟市のコーヒー屋さんからibukiオリジナルとしてフルーティで花の香りがするブレンドを作ってもらっています。
「verich」は株式会社野きろが運営しているお店です。
カヌレやジェラート、ケーキ屋など、弥彦にあるカフェのオーナーや友人の協力でスイーツの店として経営しています。メンバーに飲食経験者がいなかったため、飲食をしている仲間からの協力を得ることが必要でした。
―周りの方々とのつながりも大切にしているんですね!
石田さん:家を建てて終わり・店舗を作って終わりにはしたくないんです。いかにその街が長く継続し、住民がいつでも快適に暮らせるようにしていくか。
そのためには野きろの杜のテーマにもある、「人と人とがつながる」ことが大事だと思います。
循環型林業の川上・川中・川下を「つなぐ」ことも、これからの社会において重要だと考えています。
「野きろの杜」の名前は、和納の「和」を分解した「ノ」「木」「ロ」が由来です。
「野が広がり、木々が育ち、それをつなぐ道がある」という意味を表しています。
また、「もり」は森林の「森」ではなく、神社・仏閣を表す際に使う少し格式の高い「杜」という字を使っています。弥彦山や角田山に群生する種類の木々を主に植林し、10年後に木々が育った際に完成する植栽配置です。長い時間軸の中で街が美しい場所になることを目標としています。
初年度で完成の状態でなく、住んでいる人たちと共に成長していく街を作ることを目指しています。
商業エリアMall Site野きろにあるアウトドアが揃うショップ
「野きろの杜」は、循環型林業を支える街づくりや、人々をつなぐコミュニティづくりを軸に成長を続けています。地域の人々と協力しながら暮らしやすい街を育てていく姿勢は、これからのまちづくりの新しいモデルともいえるでしょう。
次回、最終回では「アウトドアの要素が生む効果」をテーマに、「野きろの杜」が持つ自然環境を活かした魅力や、街づくりへの影響についてお届けします。最後までお楽しみに!
■野きろの杜 https://nokiro-no-mori.jp/