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2024.12.20
加島屋の創業の経緯を教えてください
安政二(1855)年に初代社長が、阿賀野川、信濃川で取れる秋の鮭、春のマス、初冬のスケソウダラなどの塩蔵品、塩干物を商う加島屋を創業しました。2025年に創業170年を迎えます。
加島屋さんは現在、全国にお店を展開されています。全国展開するうえでどんな苦労があったか教えてください。
加島屋の味覚を、全国のお客さまから評価していただいた結果、全国の百貨店に売り場を展開することができたのかなと思います。
当社の商品は冷蔵販売商品がほとんどで、商品の品質や短い賞味期限の管理に苦労しているのが現状です。商品によりますが、賞味期限は3~4週間のものが多く、1番人気商品のさけ茶漬に関しては、賞味期限が30日です。お客さまによっては、瓶詰めだから日持ちするという感覚の方もいますが、賞味期限が短いので、商品の供給には苦労しています。
長い歴史の中でずっと守って受け継いできたいところを教えてください。
先人の知恵を生かした伝統的な生産技術による味の継承と、最新の衛生管理の手法を取り入れ、安全で安心な食品づくりを続けてきました。塩をすり込んで熟成させる昔からの技術をずっと続けています。添加物は使わずに素材そのもののおいしさを引き出す伝統的な生産技術です。
さけ茶漬も生のキングサーモンを使用し、一カ月くらい冷蔵庫で熟成してうまみを引き出します。その期間は長くても短くてもよいわけでもありません。塩の量も魚を切り適切な量を体で覚えていく、というと少し言いすぎなのかもしれませんが、一尾一尾切りながら製造に当たっているのが今の当社のやり方です。その伝統的な生産技術は今後も受け継いでいきたいですね。
社員の方々の根底にあるのはおいしいものを食べてほしいという考えだと思います。その考えをどのように会社で受け継いできたのでしょうか?
社長は、「自分が食べておいしいものがよい」という言葉をよく使います。「まずは製造者である自分が食べておいしいもの、家族に食べさせたいものを作る」という考え方をもとに社員に指導しています。
環境が変わっても品質を保ち、おいしさを届けるための工夫を教えてください。
製品はすべて亀田工場で作っています。厳格な衛生管理を行い素材の持ち味を生かした伝統的な製法で安全・安心な食品づくりを心掛けています。具体的には、添加物は使わないことと食品(素材)そのもののおいしさを引き出す努力を心掛けています。鮭に関しても、塩をすり込んで熟成しながら鮭本来の味を出すのが当社のやり方です。工場のほうも、※FSSC22000という国際規格を取得し、ものすごく厳格に製品製造に当たっています。
(※FSSC 22000は、ISO 22000を追加要求事項で補強した食品安全マネジメントシステムに関する国際規格です。GFSI〈Global Food Safety Initiative〉によって、ベンチマーク規格の一つとして承認されています。
引用元:日本品質保証機 https://www.jqa.jp/service_list/management/service/fssc22000/)
瓶詰めやほぐしといったお客さまが直接目にすることがない工程も手作業で行っていると聞きました。これらの工程は機械に任せた方が、効率が上がるイメージが強いのですが、あえて手作業で行っているこだわりを教えてください。
確かに機械を使えば手間もコストも掛からないし、効率良くできると思います。しかし、その分ちゃんとほぐれなかったり、ほぐしながら焦げや骨を取り除くことができなかったりするんです。だからそれぞれが与えられた量のなかで取り切れなかった骨や皮をじっくり見ながらほぐしを行っています。瓶詰めも機械でやればどんどん詰められるし実際に機械を使って詰めている商品もあるのですが、さけ茶漬けに関してはなかなか機械だとうまくいかないですし品質も保証できないので、手作業で詰めています。
平成2年にカナダにクリエイティブサーモン社を設立したことは加島屋さんにとって大きな変化だったと思いますが、当時のことを少しお聞かせください
昭和40年にアラスカにあるユーコン川のキングサーモンの輸入販売を開始しており、さけ茶漬などの商品にも利用していました。でも、カナダやアラスカでは先住民族の人々を非常に大切にしており、サーモンに関しても最初に先住民族の必要最低限の食糧分を確保し、残りを商用販売に利用していました。そのため、量が少なくなればなるほどわれわれも買えなくなってきてしまったんですよ。そこで、カナダで知り合いの人を通じ、カナダで養殖事業を始めたというのがクリエイティブサーモン社を設立した流れです。ただ、ユーコン川のキングサーモンが20年ぐらい前に輸入できなくなってしまって、今はほとんど養殖のキングサーモンをメインに製品を作っています。
社員が現地に赴き養殖に携わるそうですが、実際にサーモンの状態を一緒に見るなど現地の方とタッグを組んで行っているのですか?
カナダのバンクーバー島に養殖場があるのですが、社長は年2回以上訪れています。社長や社員が現場を見て、現地の方と確認をしています。カナダの方がこちらにやって来て当社の状況を見てもらい、お互い情報交換をしながら品質の良いキングサーモンを製造できるようにしています。
長年続いている企業だからこそ、会社を維持するために福利厚生や社員教育など社員のための取り組みにも力を入れていると思いますが、その中で特に自社の強みだと思う部分は何ですか。
社員はさまざまなセミナーに参加する機会がありますが、私が一番の社員教育だと思うのは、先輩がいろいろなことを、細かく教えてくれることだと思っています。店舗のほうでもお客さまに接客に関するお褒めの言葉を聞くのですが、定期的に講師を招いてセミナーなどを行うような機会はほとんどなく、先輩からこうだよ、ああだよと教え込まれてきた結果なのだと思います。伝統という言い方が良いのか分からないですが、常日頃の行動も含めたものが社員教育になっているのかなと考えています。
本間さん:福利厚生に関しては、女性の方も働きやすいのかなというイメージがあります。店頭の女性スタッフはご家庭を持っている方も多いですし、お休みの日なども 調整しやすく融通が利いていると思います。
ライフスタイルの変化によって食事の在り方も変化していますが、加島屋さんは今後家族の食卓がどのようであってほしいと考えていますか?
いろいろな事情によって家族で一緒に食事をする機会が少なくなり、一人で食事をすることが増えていると感じています。食事は、家族団らんの場であり、コミュニケーションを養う場でもあるので、食文化の継承やマナー、教育にもつながると考えています。
今後加島屋さんはどのような事業を展開したいと考えていらっしゃいますか?
和食洋食にこだわらず、新しい商品を使った製品の開発を行い、家庭の食卓を豊かにする企業として展開したいと考えています。当社はどちらかというと和食がメインのイメージがあるのですが、洋食デリといってパスタソースやカレーなどいろいろな商品を展開しています。なかなかうまくいくものばかりではなく難しいのですが、カレーは唯一現在も販売しています。昔は鮭、筋子、たらこが中心だったのですが、銀ダラやブリ、タイ、ホタテなどを使用した商品を販売しており、いろいろな素材を試行錯誤しながら製造しています。
ネットショップのターゲットは若者がメインなのか、それとも元々新潟にルーツがあった方なのか教えてください。
ネット販売のお客さまの年代層についても、中高年の方が意外と多い結果となっています。若い方から弊社の商品を買ってもらうことは、値段的に少し高いため、なかなか難しいのかなと考えています。子どもの頃に加島屋の商品を食べたことはあっても、自分では購入したことがないという若い世代へ加島屋を認知してもらい、次世代のお客さまを作りたいと考えています。食べたことはあるけど買ったことがない、もらえば食べるけど…という人は意外と多いと思います。何かの機会に食べてもらうような場を作りたいなと考えています。
カナダや北海道の現地に赴くときは同じ方が定期的に行っているのですか?
山口さん:何年も続けて行く人もいますし、若い人が順番に行くこともあります。初めての時は、いろいろ教えてもらえますし、2年目以降は自分が教える立場としてどういう工夫ができるのかも学べます。入社して分かったのは品質へのこだわりがすごいということですね。私も2年前に北海道に行きました。生の筋子を実際に触って製造することはなかなか体験できません。品質に関してうちの会社はとてもこだわっていることを実感しました。今年は社員10名程が9月頭に行って1カ月半ぐらい滞在しました。
青木部長:昔は先輩社員が教えて伝統を守るようなことをしていましたが、最近は若い人の意見を聞きながらやっています。本間さんは毎年酒の陣の先頭になっていろいろな経験をしています。
本間さん:お店以外で販売することなど、普段は経験できないことができますし、初めて時は、先輩について一から学びました。
青木部長:若い人には若い人の発想があるので、意見を取り入れることでお互いが満足することができると考えています。
酒の陣では何を販売したのですか?
本間さん:4種類の商品を箱に入れておつまみセットとして販売しました。好評だったので店頭に並んだ時もありました。手軽に食べてもらえるような商品を作りました。ただおいしい商品を詰めるだけでは駄目なので、商品の選定や原価の計算もやりました。
学生や20代の方へのおすすめ商品を教えてください
3人:学生や20代に酒の陣で好評だったのは「帆立照焼醍醐味」です。
山口さん:和だけじゃなくて洋も入れたような商品で若い人にとても人気でした。
青木部長:ちなみにJALの機内食は「帆立照焼醍醐味」「貝柱のうま煮」「さけといくらの糀漬」でした。
本間さん:「さけといくらの糀漬け」も女性や若い方には人気です。
青木部長:コロッケパンも20代の方にはお薦めです。サーモンコロッケをパンに挟んで出しています。食パンもいろいろ試食して1番合った所にお願いしたものです。
山口さん:加島屋商品でパン商品はこれだけですね。
青木部長:手作りだから買いたいという人がどれくらいいるかは正直分からないですが、安心安全でおいしいものを作っているという部分は外せません。「昔ながらの伝統を守って安全で安心なおいしい食品を作っています。一度食べてみてください」ということを一番伝えたいですね。まずは食べてもらうところからスタートしてうちのことを知ってほしいです。
弓田瑠杏(新潟県立大学3年)
取材を通して、加島屋さんは伝統を大事にしつつ、新しい技術を取り入れながらお客さまにおいしい商品をお届けることをとても大事にしていることが分かりました。実際に私も今回取材をするのに当たりさけ茶漬を購入させていただいたのですが、食材や製法など全ての工程においてこだわり抜かれたさけ茶漬は絶品で、さらに取材をすることで社員の方々の商品への愛情を知ることもでき、加島屋さんの大ファンになりました。この記事を読む若い人たちへ向けたお薦め商品も教えていただいたので、皆さんにもぜひ加島屋さんの商品を知って好きになっていただきたいと思います。
小松鈴(新潟県立大学2年)
今回の加島屋さんへの取材で特に印象的だったのは、「一番の教育は、先輩が普段の立ち振る舞いも含めて細かく教えること」というお話でした。資料やデータ以上に、社員同士のコミュニケーションが加島屋さんの伝統を受け継ぐ大きな要因だと感じました。また、コロッケパンのような親しみやすい商品があることを知り、伝統と新しさが絶妙に融合した魅力を実感しました。多くの学生は就職活動を通じて企業と関わることが多いですが、今回は取材という立場で関わらせていただき、緊張しつつも楽しくフランクにお話ができ、とても貴重な経験となりました。
【企業プロフィール】
株式会社加島屋
所在地 〒951-8066 新潟市中央区東堀前通八番町1367番地1
TEL.025-229-0105(代表)
事業内容 海産物加工、製造、販売
創業 1855(安政2)年
設立 1954(昭和29)年4月
代表者 代表取締役 加島長八
従業員 212名
事業所 [亀田工場] 〒950-0141 新潟市江南区亀田工業団地1丁目3-13
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