たべる
FOOD
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もともとは上越地域の各家庭で作られていたかんずり。家ごとに唐辛子と塩の配分が違ったり、漬ける期間が違ったりと、各家庭が独自の味を持っている、味噌のような存在でした。かつては完成したかんずりを交換するなど、地域間の交流にも一役買っていたようです。しかし今から約55年前、世の中の発展によりスーパーマーケットなどが身近になり、既成の調味料が簡単に手に入るという理由から、かんずりを作る家庭が減少し、一度は消滅の危機を迎えました。
そんな状況をどうにかしたいと立ち上がったのが、東條社長の祖父にあたる初代社長。郷土の食文化「かんずり」を残そうと、この有限会社かんずりを設立しました。そして商品を商標登録し、現在はかんずりの名前は弊社でつくられたものだけでしか使用できません。その甲斐あって妙高の食文化として根付いていくものとなったと思います。
その後、二代目の時から全国進出を目指し、三代目にあたる東條社長は海外進出を目標としているそうです。
この全国進出も決して簡単なものではなく、困難の連続でした。類似品として柚子胡椒や南蛮味噌が広まっている中で、一から商品を広める必要があったのです。百貨店で開催される新潟物産展に参加し、お客さんと直接対面して商品を紹介しながら地道に広めていきました。思うように進まない時期もあったそうです。
ところが、とある物産展で料理人さんの目に留まったことをきっかけに転機が訪れます。かんずりの味を気に入った料理人さんが雑誌で紹介したことで、テレビなどのマスコミで取り上げられるようになったのです。テレビを見て「食べてみたい!」と思った人も多く、全国のスーパーから仕入れの要望が来るようになりました。
知名度が上がった当初は、仕入れ後に「かんずりって何?」と聞かれるようなこともあったそうですが、現在は県外の高級スーパーなどでも定番商品として売られるようになりました。栗山米菓さんやカルビーさん、明星食品さんやエスビー食品さんといった他の食品メーカーとのコラボ商品も年に3~4個生まれ、新潟の味として親しまれています。
かんずりには、他の地域特有の調味料とは違う、かんずりならではの特徴がいろいろあります。
1つ目は、発酵期間が長いことです。かんずりは最低でも3年は発酵させます。そのため、製品の形になってから、すぐに販売することができません。その期間は、柚子、ねばりけ、色味、温度、湿度等、様々なことに気を付けながら作られています。
2つ目は、発酵の際、糀を使用していることです。糀は会社近くの味噌屋さんに注文し、味噌に近いものを使用しているそうです。糀を使って発酵させることによって、他の香辛料にはない旨味を重視した調味料となっています。
また、かんずりは材料にもこだわって作られています。例えば、香辛料に欠かせない唐辛子は、肉厚で辛みを抑えた独自のものが使われています。柚子は高知県産のものを使用し、甘味と水分が多く、皮まで食べられるほど柔らかいことが特徴だそうです。
かんずりのシンプルで旨味があるという個性は、他の食材の味を引き出します。どんな食材とも合わせやすく、万能なのです。また、1つのかんずりには、出来上がるまでに携わった沢山の人々の真心と愛情が目一杯込められています。
どんなものにも自然と馴染んで、いっしょに食べたら、なんだかあたたかい。
雪国育ちの控えめさんだけれど、四季を通じて料理をちゃんと引き立てる。
かんずりが持つそんな個性が、これまでも、これから先も沢山の人に愛される理由なのかもしれません。
かんずりは郷土料理であるため各々の家庭で味や材料が異なっていました。商品化にあたり、家庭でかんずりを作っている方々を集め、材料の選定や配合量などについて会議を行いました。材料の候補にはにんにくやみかん、マタタビなどが挙げられていましたが、“シンプルで旨味がでる”ことを追求した結果現在のかたちになりました。
かんずりに含まれる糀は社会で減塩が意識され始めた頃から使われるようになりました。糀を加えることで唐辛子や柚子を引き立て、より旨味を感じられるようになりました。
第1回の連載は「かんずり」文化の歴史とその特徴を有限会社かんずりの東條社長に伺いました。次回第2回目の連載はかんずりの製造工程について迫ります。(第1回おわり)
■有限会社かんずり(売店・本社工場)
住所:新潟県妙高市西条437-1
電話:0255-72-3813 FAX:0255-72-0344
営業時間 9:00~17:00
定休日 日曜日・祝日(土曜日は不定休)
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