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2024.03.12

小森はるかさん②ドキュメンタリーと日常と

osushi
各地でドキュメンタリー映画を制作・上映を行う小森はるかさん。
第2弾となる今回はドキュメンタリー映画や上映会への想いを中心にお伺いしました!

▽前回はこちらから

小森はるかさん①ドキュメンタリーと日常と

 

 

―撮影している時に意識していることは何ですか?

 

小森さん:カメラを通して何にリアリティを感じるのか、意識して撮影しています。

ドキュメンタリーだからと言って実際起きていることだけを撮っても、それが伝わるかどうかは分かりません。

 

映像作品は受け手の人がどうとらえるかによって伝わる内容が変わってきます。ありのままを伝えたいけど、そのまま素材を見せても伝わらない。どうやって作品に落とし込んでいくのかを考えているときに、物語的な要素が手伝ってくれているなと感じることもあります。

 

そしてもう一つ特に大事にしていることが、カメラを向ける相手はカメラを向けられることを生業とはしていない一般の人であるので、カメラが暴力にならないか、ほんとうに相手を傷つけていないのかということを、撮るときも見せるときにも考えるようにしていることです。

 

 

―映像作品は実際に被災地の方々にも見てもらっているのですか?もし見ていただいているのなら、なにかコメント等をとかいただくことはありますか?

 

小森さん:ご本人たちにはもちろん見てもらっています。生活を立て直してきた人たちにとって、震災後の12年間というのは忙しかった時間だと思うんですね。これまでの生活を振り返る時間があまりなかったんです。その時、自分たちはどのように行動していたか、作品を通して懐かしんでもらえて。復興期の渦中であの時どのように生きていたのか確かめるように見てくださったんです。そんな様子を見て、うれしいというか、印象深かったなというか、お返しできてよかったなと思いました。

 

 

最初にカメラをむけるきっかけをくれたのも避難所にいたおばあさんで、

「こわれたふるさとを見るのは怖いし、足も悪くて現地にも行くことができないからカメラを持っているなら代わりに撮ってくれませんか?いつか見たくなる時があるかもしれないです」と私に頼まれたんです。それだったらわたしでもできるな、と思って。

 

その人が出来ない代わりに誰かがちょっと助けてあげるみたいな役目として「記録をする」ということがあって、それはすごく大事なことだと思います。経験した本人にしか語れないことは、その人にとっても負荷がかかりすぎると思うし、専門家だけが語る資格を持つものでもない。みんなでちょっとずつ助け合って伝えていく方が、後世に伝えられるのではないかなと思いました。

 

 

―今回取材先を決めるにあたり、大学の講義で小森さんを知ったというメンバーから提案があったんです。その中で、今の若者たちに伝えたいことを教えてください

 

小森さん;年を重ねていく中で、若い人たちの存在が気になり始めて意識するようになりました。大学に行って授業に参加させていただく中で、他者とかかわりたいとか、被災地の方と関わりたいけどどうやって関わったらいいのかわからない学生が多くいることを知りました。なので、何かしたいけどわからないという葛藤をしているときに、一緒にやろうよ!と後押ししたいと思いますし、被災地の映像を見てやりたいことが芽生えたら、自分で行動してみるのも良いことだと思います。たとえそれが大きいことでなくても、その背中を押すことができたらいいなと思っています。

 

特に最近は自分と社会とのつながりを考えている若い人たちがすごくいるなと感じています。今回の能登半島地震でも動こうとしている学生がたくさんいます。東日本大震災の時、私も学生だったのでその時の気持ちを覚えているのですが、直ぐに動けなくても、ゆっくり長い時間考えて、関わろうとする人たちがいると知っているので、どんなタイミングでも、誰でもできることがあるから、何か戸惑っている人に対して手伝えることがあったらいいなと思っています。

 

 

―それでは映像作品的な意味で映像作品を見られることはあるのですか?

 

小森さん;社会問題に関心あるひとだけでなく、美術が好きだったり映画が好きだったりする人も面白いと思ってみてくれていると思います。その境目あたりに私は立っていたいなと思っていて、「記録すること」と「表現すること」の間に関心がある人、若い人たちの中でもそういう表現の在り方を模索している人が、私の映画に興味を持ってくれているのかなと思っています。

 

 

―つい先ほども上映会を行ってきたということですが、やはり映画館で見るのと違いますか?

 

小森さん:見ている人の雰囲気とかを直に知れるので、なんとなく会場の人がどう思っているのかを感じられる点はやっぱり違いますね。上映会場によっては映画の見え方も変わってくるので映画館とはまた違った、見ている人たちが映画を作ってくれるという感じがともよいのでお勧めしたいです。入場料も手頃だったりしますし、若い人たちや映画を普段観ない人にとっても参加しやすく、映画に触れられる機会だと思います。

 

 

―新潟以外でも上演会を行っているのですか

 

小森さん:新潟以外でも全国各地で行っています。4月から「ラジオ下神白」という作品は映画館での上映が決まりました。また3月にはヨーロッパで、過去に陸前高田で作った映画を上映してもらう予定です。映画が完成してから時間が経っていますが、いまどのように作品が伝わるのだろうかと考えます。自然災害に限らず戦争や紛争で故郷を失う人たちがあとをたたない現状ですが、災厄が起きたあとに、私たち人間はどう生きていくのか、映画を通して様々な国の人たちと話せる機会が持てたらと思っています。

小森はるかさんの「たすいち」

「自分の眼でその街を見る・感じる」

自分自身で体験して得たものは何ものにも代え難い。

小森さん、貴重なお話をありがとうございました。

 

 

 

【おしらせ】

震災のリアルを追い、伝え続けている小森さんが監督した映画『ラジオ下神白』の上映会が新潟県長岡市でも行われます。東日本大震災、東京電力福島第一原子力発電所事故によって避難してきた人々が暮らす福島県復興公営住宅・下神白団地。そこで生まれたプロジェクト「ラジオ下神白」の活動や「伴奏型支援バンド」など、団地で繰り広げられた一風変わった被災地支援を追いかけた作品です。

 

■新潟県内での上映スケジュール

2024年3月24日(日)10:20~ ※小森はるかさん登壇なし

『ラジオ下神白』©︎Komori Haruka

会場 アオーレ長岡市民交流ホールA

 

『ラジオ下神白』©︎Komori Haruka

 

詳しくは下記URLから!

https://nkyod.org/event-list/328059

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