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―沼垂テラス商店街の成り立ちを教えてください。
もともとは商店街ではなく、「沼垂市場通り」と呼ばれていました。でも市場の商売は小さく、高齢化や郊外への大型店進出などで淘汰されていました。シャッター通りだった2010年、ここで半世紀以上の歴史がある大衆割烹「大佐渡たむら」の店主が、総菜とスイーツの店「Ruruck Kitchen(ルルックキッチン)」を開店させました。誰もが店に入りやすく、地域密着を目指しました。
1店舗では集客が厳しいと仲間を求めたところ、翌11年に家具職人と染色家のご夫婦が家具とカフェのお店を、翌12年にはそのカフェを訪れた別の夫婦が陶芸工房を開きました。ノスタルジックで空気がゆったり流れる雰囲気を気に入ってくれました。
さびれた通りにおしゃれな店ができるとメディアが面白がってくれて、お客様が少しずつ増えていきました。同時に出店の問い合わせがくるようになり、テナントを集めて小さな商店街にしてみようと考えました。14年に商店街の管理・運営を担う株式会社「テラスオフィス」を立ち上げ、会長は大佐渡たむらの2代目が務めています。
―この雰囲気は意図的なものですか。
私たちは何もしていません。これが地域の宝です。建物は内側をリノベーションしていますが、半世紀以上前からの姿です。古いもの、歴史、文化、景観を生かした新しい街づくりを意識しています。
沼垂テラス商店街は正直、行き来しやすい場所とは言えません。駅からは歩いて20分。バスの本数も減っています。ここでしか出会えないモノ、ヒト、空間―。モノを選ぶ人、そのモノを作る人、そうした人たちから生まれる魅力的な空間があるからこそ、足を運んでもらえます。商店街と店舗それぞれにファンがいて、コミュニケーションを求めて訪れる人もいます。そこにノスタルジックという地域の宝があり、独特な空間を生み出しています。

こだわりの店づくり、品ぞろえが楽しい沼垂テラス商店街の店舗
―毎月1回の「朝市」「冬市」について教えてください。
商店街が誕生した2015年4月から、基本的に第1日曜日に開催しています。朝市は4月から11月、盛大にテントが並びます。ハンドメイド作家さんやお菓子、野菜など飲食、物販ともに商店街のコンセプトに共感してくれる個性的な店がたくさん出店します。冬市は12月から3月、冬で寒いけど外に出て楽しもうよというスタンスです。出店者も寒さが大変なので、キッチンカーが中心です。
―普段の商店街の様子はどうですか。
平日は地域の方が野菜や総菜を買いに来たり、ランチやカフェを利用します。店舗の休みが多い火曜や水曜は本当にのどかです。休日は観光色が強くなります。週末やGW、夏休み、好天のときは県外や海外からのお客様が多くなります。
―沼垂は猫のイメージがあり、「沼ネコ焼」というスイーツもあります。
もとは野菜中心の市場で、猫はネズミの見張り番として重宝されていました。沼ネコ焼は、商店街の広報ツールとして考案しました。新潟にこだわり、もちっとした皮には新潟県産コシヒカリの米粉が3割ほど配合されています。中身は季節ごとに10種類ほど用意しますが、例えば近くの酒造の酒粕を使ったあんこなど、これも地域のストーリーが語れるようになっています。

白くてかわいい沼ネコ焼
―2025年度あしたのまち・くらしづくり活動賞(公益財団法人あしたの日本を創る協会・読売新聞東京本社・日本放送協会共催)で、最高賞の内閣総理大臣賞を受賞しました。
私たちはありがたいことに毎年のように全国的な賞をいただいています。最初は2015年度の地域再生大賞準大賞で、一般的には読めない「沼垂」というワード(地名)が広まりました。その後はグッドデザイン賞、経済産業省のはばたく商店街30選、総務省主催の賞などです。全国各地でシャッター街が増えている今、一度は衰退した場所を再生させ、新しい商店街をつくっていることが注目されていると思います。
受賞すると視察やメディア取材が多くなり、周知につながります。
推薦したいと声を掛けていただくこともあり、そういった時は、ありのままの私たちの活動が世に認めてもらえたと、とても嬉しく思います。

高岡さんにインタビューしている様子
―学生や新潟に住んでいる人に伝えたいことは。
新潟はいいところです。大きな川が流れ、素敵な橋が架かり、夕日も海岸も山の景色もきれい。地元では当たり前なのであまり魅力に気づかないかもしれないけれど、地域外の人、例えば海外の人が見たら魅力的というものがあります。お金をかけて何かを作るという発想もいいけれど、魅力がないかまずは自分たちの足元を見てみようよ、と。
私は沼垂出身ですが、若い頃は地元に対して正直何も感じていませんでした。だけど進学でいったんここを離れて、さらに年齢を重ねてじわじわと良さが分かってきました。気づくには年月も必要かもしれません。若いうちにそれを意識することによって、地元愛が湧いてきたり、地元の良さにもっと早く気づけると思います。
―今後の展望や課題は?
今年度10周年を迎えました。商店街としてはまだ発展途上、集客面でも成熟しているわけではありません。新潟の誇れる一つの観光名所になりたいし、そうなる働きかけをしていかなければいけません。
この街の魅力を知れば、良さに気づいてもらえます。街に住みたい人、実際にUターンで出店した人もいます。そういう人も大歓迎。交流人口を増やして、もっと街を元気にするのが目標です。

沼垂テラス商店街の冬市を楽しむいくらちゃん