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—まず、たてよこ書店について教えてください。

雁木の通りにある町家の表のスペースに本を並べています。2022年、大学生の頃に開業しました。現在は東京と2拠点で生活をしていて、店を開けるのは月前半の2週間がメーンです。後半はお手伝いしてくださる方に店番をお願いする日もあります。
扱うのは古本8割、新刊2割です。古本は地域の方々から買い取ったり引き取ったりすることが多いです。何となく捨てられないとか、リサイクルショップに売るよりは地域の書店に活用してもらいたいと言って持ってきてくれます。新刊は中小取次から仕入れたり、出版社に直接連絡して仕入れたりしています。
―このお店を起業した経緯は。
大学2年のとき、新型コロナウイルスの影響で授業全てがオンラインになりました。東京にいる必要性がなくなり、地域づくりに関連するプロジェクトに参加するために福島県葛尾村に通ったり、広島県尾道市に一カ月間暮らしたりしました。空いた時間はまちの小さな店にひたすら通い、尾道では空き家をDIYしてお店を開いたり、誰かをお手伝いして生活したりする方に出会いました。僕も「自分の仕事を自分でつくる」ことが出来るのではないかと地元で起業しました。
—店内は町家らしさのある土間に、古材を活かした本棚や台、そこにランプが灯って温かさを感じます。内装のこだわりは。

実際の店内
「綺麗にしすぎない」ことだと思います。近年は町家をリノベーションしたお店が増えています。自己資金による初期投資や融資を受けて綺麗に改装する場合が多いですが、誰もができる選択ではありません。尾道で出会った人々のように、たてよこ書店も不要となった材料を集めて自分で作っています。机や桐タンス、電球などはもらいものですし、年末年始は友達と2人でDIYをして店舗スペースを拡張させました。

手作りの本棚
資金がない大学生が始めた書店です。融資を受けなくてもできる、時間をかけて少しずつ改装すればお店になると感じてもらえたら嬉しいです。
―堀田さんの人生に最も影響を与えた本はなんですか?
川村元気さんの「四月になれば彼女は」です。中学生の頃に書店で気になってなんとなく手に撮ったのですが、僕が初めて読んだ長編小説で、物語の世界の素晴らしさを感じました。そこから少しずつ小説を読むようになって、今につながっています。最近は「新百姓宣言」や長田弘さんの詩集「世界はうつくしいと」が印象に残っていますかね…。

取材に応じてくださる堀田さん
―堀田さんの仕事に対する姿勢、価値観はどこから生まれたのですか?
僕は淡々としたタイプで「ハレの日」のような特別なことは得意ではありません。日常に少しずつある楽しさが自分にとっての豊かさです。また、学生起業家が集まるプログラムに参加して、さまざまな起業の形を知りました。それが僕自身の規模感を大切にした「等身大の事業」につながっています。

淹れていただいたコーヒと、本のしおり
—たてよこ書店さんのホームページでは、手紙のお店やセレクトショップ&ギャラリーなどの他の事業も書かれています。
開業から3年が経ち、いろいろと取り組んでみたのですが、いまは「しっかりと本屋に時間を使いたい」という想いにたどり着きました。他の事業は現在「お休み中」として整理しているところです。その分、本を増やしたり、多種多様な本を仕入れたりすることに注力しています。出版にも力を入れ、自分の日記の本と、知人が世界一周した旅の記録をまとめた「蛇口からガンジス川」という本をつくりました。200ページを超えるくらいで、テキストや写真を沢山盛り込みました。出版については独学ですが、幸い書店ということもあり、身の回りにサンプルがたくさんあるので助かりました。

様々な本が並ぶ本棚
—堀田さんが思う新潟や上越の魅力は。
上越は海や山があって、新幹線で東京から2時間です。夏も冬も遊べて、美味しい米があります。都会ではないけれど田舎すぎるわけでもなく、ちょうど良い規模感だと思います。また、高田に残る雁木は魅力的です。昔ながらの雁木の街並みが見られる場所は全国でも多くないですし、傘を差さずに街中を歩けるのは革命です。

たてよこ書店がある雁木の街並み
—では、課題はありますか?
若い人が地域外へ進学して卒業した後、Uターンしてくる動きをあまりつくれていません。また、細かく見ていけば様々な課題があると思うのですが、一番の課題は受け身のマインドなのではないかと思っています。自分たちが暮らすまちやそこでの暮らしは自分たちでつくっていく、そういったマインドを持つ人が増えていけば、地域に存在する様々な課題は解決に向かっていくのではないでしょうか。
―新たな事業を立ち上げるとき、怖さはありませんか。
一言で怖さと言っても、しっかり言語化してみるといろいろなことが見えてきます。失敗してお金が無くなること、周囲からの評価、一般的なレールから外れること…。ただ一つずつ言語化していくと、そんなに怖くないな、意外と大丈夫かもと感じられることがほとんどでした。この感覚は人によるのかもしれませんが、地域の会社や大人が受け皿になり、安心してチャレンジできる環境をつくることも大事だと思います。

―学生に伝えたいことはありますか?
「自由に好きなことやりなよ」ということでしょうか。社会の課題や今後のキャリアを見据えて、そこに向かって自分の動きを決めるというのももちろん良いですが、もし興味のあることや、やりたいことがあれば、それを起点に動きを決めるのもいいのではないでしょうか。

堀田さんと取材班
取材後に、堀田さんに高田駅周辺の街歩きマップをいただき、各店舗の魅力を教えてもらいました。私たちは、アトリエショップ&カフェの「sankaku × shikaku」さんで昼食をいただきました。

おかかや鮭、塩などのおにぎり

購入した本を紹介するメンバー
取材班3人と鮭プロ事務局のスタッフでこたつを囲み、書店で購入した本の一節や日常生活について談笑を交わした時間が、とてもあたたかく、思い出に残る一日となりました。
今回の取材で特に印象に残ったのは、堀田さんが「何気ない毎日を少しずつ積み重ねる」「最初から完璧を求めすぎない」という姿勢を大切にされていることでした。小さくて意味がないように見えることでも、毎日少しずつ積み重ねていこう、という一歩踏み出す勇気をもらえたように思います。
(新潟国際情報大学 4年 今野瑠菜)
書店は、地域の「たてとよこ」を紡ぎ、日々の営みを育みながら、その地域の可能性を広げていく存在であると感じました。 飾らないことの美しさや、等身大で着実に進むことの大切さを学ぶとともに、堀田さんの価値観に触れたことで、常識にとらわれず視野を広げていく重要性も改めて実感しました。
(新潟県立大学3年 前田唯衣花)