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長岡市の新潟県立近代美術館で開催中の企画展「西洋絵画400年の旅―珠玉の東京富士美術館コレクション」。日本の美術館ではあまり見ることができない古典的巨匠の作品からモネやルノワールといった人気画家、20世紀の近現代美術まで、有名画家の作品83点が一堂に会する注目の展覧会です。にいがた鮭プロジェクトの学生運営メンバー「チームいくらちゃん」が、「それぞれの『推しアート』を見つける」をテーマに企画展を鑑賞してきました。

会場の様子
今回の企画展では、東京富士美術館(東京都八王子市)が所蔵する約3万点のコレクションの中から西洋絵画の名品を厳選して展示。16世紀のイタリア・ルネサンスから20世紀の近現代美術までの約400年間を旅するようにたどる構成になっています。
会場の入り口で、企画展のキャッチコピー「時を超えて、名画と出会う」と書かれたアーチが出迎えてくれました。学生メンバーは、ここから始まる「西洋絵画400年の旅」への期待に胸を膨らませながらアーチをくぐって展覧会場へ。
学生メンバーには事前に図録で「気になる作品」を1点ずつ選んでもらいました。会場内で自身が選んだ「推しアート」を探しつつ、まずは展示フロアを自由に鑑賞しました。

鉛筆でメモを取りながら絵画を鑑賞する学生メンバー
新潟国際情報大2年、太田美結さん(19)が選んだ「推しアート」は、ルネサンス期に活躍したヴェネツィア生まれの画家・ティントレットの「蒐集家の肖像」です。

「第一印象で、他の絵と比べると写実的ではない絵の具の質感、ハッキリとした色彩と『手書き感』が特徴だと感じました。また、手前の人物よりも背景の絵画、古代彫刻や建物の描き込みがより繊細なタッチで描かれているのが印象的でした」と太田さん。
「男性の眉間に皺がよっていて、少し不機嫌そうにも見えます。どのような状況でこの絵が描かれているのか、何故このような場面が切り取られているのかー。そんなことが気になったのも、惹かれた理由の一つです」
新潟大3年、星春希さん(20)が選んだのは、18世紀のパリに実在した一流サロンの女主人の娘を描いた「ファルテ=アンボー侯爵夫人」(ジャン=マルク・ナティエ)。上記の太田さんと同じ肖像画のジャンルですが、色彩や人物の表情など雰囲気は全く違います。

星さんは「最初に感じたのは、人物の美しさ。淡い色合いの衣装や上品な装飾が優雅な雰囲気をつくり出していて、とても印象的でした。でも、それ以上に心を引かれたのは人物の目です。まるで見る人に何かを伝えようとしているようで、思わず長く見つめてしまいました」と「推しポイント」を教えてくれました。
「手に持っている仮面も気になります。仮面には『本当の自分』と『人に見せる姿』という意味が込められているようにも思えます。ただ美しいだけではなく、人物の内面や感情について考えさせられる魅力的な作品だと感じました」
新潟大3年、石井千陽さん(20)は、20世紀のシュールリアリズムを代表するベルギーの画家、ルネ・マグリットの「観念」を選びました。

「まず、顔がリンゴになっているのが面白いと感じました。顔がないのに、顔が見えてきそう。絵を見る人が顔を想像していけるような絵なのかなと思いました」と石井さん。
「一般的にリンゴといえば赤いイメージですが、この絵では頭部のリンゴは緑色。色が反転しているようで面白いと感じました。背景を赤色で表現しているのでリンゴの印象が強くなっています。(頭部にあたるリンゴとスーツの襟の間の)首がないこと、そして影の入れ方で、視線がりんごに向かうところも気に入りました。スーツはリンゴに比べて目立たないけれど、明るい色のネクタイに目が向きます」
それぞれが「推しアート」と対面した後、新潟県立近代美術館の専門学芸員・濱田真由美さんに、企画展の鑑賞ポイントを詳しく解説してもらいました。

図録を手に解説する専門学芸員の濱田真由美さん
展覧会を味わうポイントの一つは「企画の意図を読むこと」。濱田さんは「展覧会には必ず企画者の意図があり、テーマに沿った作品選定や展示構成、会場の演出がされている。今回、入り口に置いたアーチもその一つです。そのストーリーを意識すると、個々の作品を見るだけではない、より深い楽しみ方ができます」と教えてくれました。
今回の企画展では、美術のルールが明確だった時代の作品で構成された第1部と、新しい表現や挑戦が注目されるようになった19世紀以降の近現代美術が並ぶ第2部が対比的に構成されている点が特徴です。
ルネサンスから19世紀前半ごろまで、西洋絵画では描かれる主題やジャンルによって明確な「ランク付け」がありました。歴史画が最上位で、身分の高い人を描いた肖像画、風俗画、風景画と続き、静物画は最下位に位置付けられていたといいます。「現代の感覚からは想像できないのですが、主題によって絵画の序列が決まり、それが画家の格付けや作品の価格にも影響していました。そうした背景を知ると、作品の見方が変わってきます」

真剣な表情で説明を聞く鮭プロの学生運営メンバー「チームいくらちゃん」
濱田さんは、学生メンバーが選んだ3作品についても解説してくれました。
まずは、太田さんが選んだティントレットの「蒐集家の肖像」。
背景に描かれた彫刻や金時計などのアイテムから、描かれた人物の地位などを読み解く面白さがあるといいます。「毛皮や指輪といった装飾品や景色の描き込みなど、細部を観察したり調べたりすることで解釈が広がったり謎が解けたりすることがあって、それが学芸員という仕事の魅力でもあります」
星さんが選んだナティエの「ファルテ=アンボー侯爵夫人」は、同じ肖像画でも太田さんが選んだ重厚な作品とは雰囲気が異なり、ロココ時代特有の柔らかく華やかな雰囲気が特徴。
「今回の企画展は、西洋絵画を通史で眺めて見比べられるという点が大きなポイント。特に肖像画は多いので、見比べてみると面白いですよ」
最後に、石井さんが選んだマグリットの「観念」。
「マグリットは、後々のコンセプチュアルアートや現代美術にとても影響を与えている画家。日常の感覚を揺さぶり、疑問を抱かせる作用があるのが特徴です」と濱田さん。「これは推測ですが」と前置きしつつ、「日本ではリンゴは赤が普通ですが、フランスでは緑のリンゴが多い。また、リンゴにはアダムとイブの原罪という意味合いが含まれているのでは。自由に解釈して楽しんでみて」と話してくれました。

名画の世界に浸れるフォトスポットも。絵画の世界でピクニック気分
解説を聞いた学生メンバーは「最初は人物や背景の細かな描き込みに惹かれましたが、解説を聞いて一つ一つのモチーフに意味があることを知り、さらに好きになりました」(太田さん)、「今回初めてじっくり美術館で作品を鑑賞しました。解説を聞き、作品を比較し、さらに意見を交わすことで見方が大きく広がり、美術館がこれまでより身近で楽しい場所だと感じました」(星さん)、「なぜこの作品が魅力的に見えたのか言語化することが難しかったのですが、リンゴとスーツという現実的にはありえない組み合わせが、驚きと思考を与える作品なのだとわかりました」(石井さん)と感想を教えてくれました。
濱田さんは大学生に向けて「ウェブや図録で見るだけでなく、ぜひ美術館を訪れて本物の作品が持つ存在感を味わってほしい。それが新たな発見や興味のきっかけになると思います」とメッセージを送っていました。
■会期 2026年6月27日(土)~8月23日(日)
■休館日 毎週月曜日(7/20、8/10は開館)、7/21(火)
■開館時間 9:00~17:00(観覧券の販売は16:30まで)
■会場 新潟県立近代美術館(新潟県長岡市千秋3丁目278-14)
■観覧料 大学・高校生1,000円、一般1,600円、中学生以下無料